北大、機能性材料「柔粘性/強誘電性結晶」の機能チューニング手法を開発
マイナビニュース / 2024年8月5日 19時56分
北海道大学(北大)は8月2日、これまで確立されていなかった、柔らかい強誘電分子結晶の機能チューニング手法の開発に成功したと発表した。
同成果は、北大大学院 理学研究院の原田潤准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する機関学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。
無毒で高い加工性を持つ分子性結晶の“強誘電体”が注目されている。高温で柔粘性結晶相となり、室温で強誘電性を示す機能性材料「柔粘性/強誘電性結晶」(以下、P/FC)は、多結晶材料でも強誘電体として機能することが特徴だ。また、粉末を押し固めるだけで簡単に透明な多結晶フィルムが得られるといい、セラミックス強誘電体の代替、またその機能の補完材料として期待されている。しかし、材料として活用する上で必須となる、用途に合わせて機能を調整する方法が確立されていなかったという。
現在幅広く産業利用されている無機酸化物のセラミックス強誘電体も、母体となる酸化物強誘電体に、異なる金属イオンを持つ酸化物を混ぜ合わせた“固溶体”として実用化されている。しかし分子結晶は一般的に溶液から調製するため、溶解度が異なる化合物の固溶体を作製するのは困難だ。そこで研究チームは今回、2種類のP/FCが均一に混ざった固溶体を合成するための手法を開発したとする。
今回の研究では、高性能なP/FCの「過レニウム酸1-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニウム」(以下、(1))を用いて、「過レニウム酸キヌクリジニウム」(以下、(2))と「過ヨウ素酸1-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニウム」(以下、(3))という2種類のP/FCのそれぞれとの固溶体を合成したとする。それらはいずれも、分子の形状が似通ったカチオンおよびアニオンからなるイオン性の分子結晶で、水やエタノールに良く溶ける。しかし、たとえば(1)と(2)を1:1の割合で含む水溶液を蒸発させても、(1)と(2)の固溶体ではなく、それぞれの結晶が混在する固体の混合物が得られる。これは、分子結晶の固溶体を溶液から合成しようとする時に頻繁に起こる問題だという。
分子結晶は通常、それを溶かした溶液を冷却する、あるいは溶媒を蒸発させることで作製される。しかし、それらの操作は物質を精製する過程でもあるため、2種類の化合物の溶液からは、溶解度の低い化合物から順に結晶化し、最終的に2種類の結晶の混合物が得られがちだ。また固溶体が得られる場合でも、その組成は原料溶液とは大きく異なることが多く、組成の均一な固溶体を高収率で得ることは容易ではないとする。
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