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横市大など、ワニはなぜ長時間潜水できるかをヘモグロビンの立体構造で解明

マイナビニュース / 2024年8月8日 15時21分

画像提供:マイナビニュース

横浜市立大学(横市大)と大阪大学(阪大)は8月7日、ワニのヘモグロビンの立体構造とその「アロステリック制御」に関わる重炭酸イオンとの結合様式を、クライオ電子顕微鏡単粒子解析により明らかにしたことを共同で発表した。

同成果は、横市大大学院 生命医科学研究科の高橋捷也大学院生、同・ジェレミー・テイム教授、同・西澤知宏教授、同・李勇燦助教、阪大 蛋白質研究所の栗栖源嗣教授、同・川本晃大助教らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

血液が赤い理由でもあるタンパク質「ヘモグロビン」は、ヒトを含むすべての脊椎動物において、血液中の酸素運搬の役割を担っていることはよく知られている。同タンパク質は、αサブユニットとβサブユニットがそれぞれ2つずつ会合した4量体構造をしており、各サブユニットはヘムと呼ばれる赤色に見える鉄イオン錯体を有し、酸素が1分子結合することが可能だ。

酸素がヘムに結合すると、ヘモグロビン4量体はR(Relaxed)型という「開いた」構造を取り、一方で、酸素が外れるとT(Tense)型という「閉じた」構造を取ることが明らかにされている。これらの構造の変化は、大半の脊椎動物において、有機リン酸の作用によって「アロステリック」(ヘモグロビンの1つのサブユニットに酸素が結合しただけで、連鎖的に他のサブユニットにも構造変化が伝わり、酸素に対する親和性が向上する仕組み)に制御される。

一方、脊椎動物で唯一ワニは、有機リン酸の作用を受けることなく、重炭酸イオン(HCO3-)の作用を受けることが、50年近く前の1977年に発見されていた。この重炭酸イオンの作用のおかげで、ワニは長時間潜水しても酸素を供給することができるため、それを活用した狩りを行うことが可能となっている。

このワニに特有な重炭酸イオンの作用を明らかにするため、ワニのヘモグロビンの立体構造の分子レベルでの解析が必要だったが、その良質な結晶が得られておらず、いまだにX線結晶構造解析による構造決定に成功していなかったという。そこで研究チームは今回、「クライオ電子顕微鏡単粒子解析法」を用いることで、ワニのヘモグロビンの構造決定を目指すことにしたとする。なおクライオ電子顕微鏡単粒子解析とは、クライオ電子顕微鏡を用いて約-180℃の低温環境下でタンパク質などの試料に電子線を照射して撮影し、得られた粒子像から三次元構造情報を再構成して、分子の立体構造を解析する手法のことをいう。

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