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東大などが新たな強誘電性の発現メカニズムを提案、実証にも成功

マイナビニュース / 2024年8月15日 17時10分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)、ファインセラミックスセンター(JFCC)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、J-PARCセンター、住友化学の5者は8月9日、結晶構造に由来するキラリティと電気トロイダルモーメントの結合に基づく新しい強誘電性発現メカニズムを提案し、実際に一次元磁性体「SrM2V2O8(M=Ni,Mg,Co)」(一次元磁性体(1))において、同メカニズムに従う強誘電性を実証したと発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科の永井隆之 特任助教、同大 木村剛 教授(社会連携講座「新しい物理現象を用いた次世代環境配慮デバイスの開発」特任教授兼任)、JAEA 物質科学研究センター 強相関材料物性研究グループの萩原雅人 研究員、JFCC ナノ構造研究所 計算材料グループの横井里江 研究員、同 森分博紀グループ長/主幹研究員(東京工業大学 元素戦略MDX研究センター 特定教授兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する機関学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

従来の強誘電体の探索指針は構成元素に依存しており、「非磁性カチオン」(原子を巡る電子の軌道の1つのd軌道が空(d0)である陽イオン)を含む物質を中心に探索が行われてきた。これは特定の構造下で、d0カチオンが歪んだ強誘電構造を安定化させるためだが、磁性や電気伝導性は一般的にd軌道の電子が担う場合が多く、d軌道は占有されている必要があるため、従来の指針の下では磁性や電気伝導性が共存する強誘電体の探索は困難だったという。そこで研究チームは今回、強誘電体を結晶対称性の観点から再考し、キラリティと電気トロイダルモーメントの結合が強誘電性を発現することを発案することにしたとする。

キラリティは右手と左手の関係のように、鏡像同士を同じ向きで重ね合わせることができない性質のことをいう。一方の電気トロイダルモーメントは電気双極子モーメントの渦状配列で定義され、結晶中ではたとえば回転変位という形で現れる。対称性を考慮すると、キラリティと電気トロイダルモーメントが同時に存在する状況は、自発分極を持った状態と同じ対称性を有することがわかり、強誘電性の発現が期待されるという。

この2つの性質について、研究チームではネジの運動に例えることができるとしている。それによると、キラリティはネジの溝の切り方(左右)に対応し、電気トロイダルモーメントの符号はネジを回す方向の時計回り・反時計回りに対応するとのことで、右ネジを時計回りに回すと自発的にネジは直進するが、この並進運動が自発分極の発現に対応するものとなるという。重要な点は、このメカニズムで発現した強誘電性はネジの溝の切り方と回転方向に依存するが、ネジの構成元素には依存しないということで、原理的には磁性や電気伝導性との共存も可能ということとなる。そこで今回の研究では、こうした概念に合致する物質として、ストロンチウム、バナジウムに加え、ニッケル・マグネシウム・コバルトのいずれかで構成される酸化物である一次元磁性体(1)に着目することにしたとする。

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