さらに強く、シンプルに - スペースXが最強ロケットエンジン「ラプター3」公開
マイナビニュース / 2024年8月19日 17時36分
スペースXはまた、これまでのロケットや宇宙船の開発と同じく、最初から完成品を目指すのではなく、段階的に改良を重ねて、徐々に完成度や性能を高めていくというやり方を、ラプターの開発でも採用している。
まず、2019年に初期型の「ラプター1」が完成し、2023年には改良型の「ラプター2」が完成した。また、これらのエンジンを組み込んだスターシップの試験機が、これまでに4回打ち上げられている。
ラプター3
そして現在、スペースXはさらなる改良型となる「ラプター3」を開発している。
従来のエンジンと比べたとき、最も目に付くのは、そのシンプルさである。他のロケットエンジンは、エンジンの外側をさまざまな配管やケーブルが這い回っている。しかし、ラプター3ではそうした部品がほとんどなく、きわめてすっきりした外見になっている。
そのシンプルさは、これまでに開発されたあらゆるロケットエンジンの中でも群を抜いている。実際、スペースXのライバル企業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のCEOで、ロケット・エンジニアでもあるトリー・ブルーノ氏も、X(旧Twitter)で「たしかにシンプルだが、すべての部品が取り付けられていないのではないか」と、誤解したポストをしていた。すなわち、専門家ですら、未完成のエンジンと見誤ってしまうほどの常識外れの出来であることがわかる。
スペースXのイーロン・マスクCEOによると、ラプター3ではエンジンの簡素化を図ったうえに、外部に露出している部品に再生冷却(推進剤を利用した液冷)機能を追加したという。さらに、世界で最も先進的な金属用3Dプリンターを使い、推進剤やガスなどの流路を、エンジン内部に入れ込むことにも成功したと語る。
その結果、ラプター3には耐熱シールドや消火システムが不要になり、その分軽量化できたばかりか、部品数が少なくなったことで造りやすくもなったという。
また、ラプター2の1基あたりの質量は1630kgだったところ、ラプター3では1525kgになり、さらに関連するハードウェアすべてを含めた質量も、ラプター2では2875kgだったものが、1720kgにまで軽量化できたという。スターシップではラプターを合計39基、「スターシップ3」と呼ばれる改良型では50基超を装備するため、トータルでは大幅な軽量化になる。
さらに、推力の向上も果たし、ラプター2では230tfだったところ、ラプター3では280tfにまで増加するとしている。
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