東大など、地球の「隠された貯蔵庫」がマントルの底に存在することを確認
マイナビニュース / 2024年8月21日 14時51分
東京大学(東大)と北海道大学(北大)は8月20日、北大の同位体顕微鏡を利用して、マグマと鉱物(ブリッジマナイト)の間の微量元素(ランタン、ネオジム、サマリウム、ルテチウム、ハフニウム)の分配係数を地球の下部マントルを広くカバーする圧力範囲で初めて決定したことを共同で発表した。
同成果は、東大大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻の小澤佳祐大学院生(研究当時)、同・廣瀬敬教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学振興協会が発行するオープンアクセスジャーナル「Science Advance」に掲載された。
多くの隕石は、火星と木星の間にある小惑星帯に起源を持つことがわかっている。そうした中で、始原的とされる隕石の化学組成が、太陽の大気と一致することが明らかにされていたことから、太陽と小惑星帯の間に位置する地球の組成も同様であると考えられていた(ただし、水のような揮発性成分を除く)。地球のマントル由来のマグマのハフニウムとネオジムの同位体組成には強い相関があり、それらは1つの直線上に乗ることが知られている。しかし、その直線は始原的隕石の組成を通っていなかったことから、地表では観測されない「隠された貯蔵庫」が地球深部にあることが予想されたという。ただし、その貯蔵庫がどこにあるのか、そしてどうやってできたのかはこれまでのところよくわかっていないとする。
地球はおよそ46億年前の形成時、表面まで全球的に溶融したマグマオーシャンだったと考えられている。マグマオーシャンの冷却が進むと、「ブリッジマナイト」の結晶がマントル中位に集積し、マグマオーシャンは上下2つに分けられる。浅い方のマグマオーシャンは地球表層から冷却が進み、数百万年で固結。一方、深い方のマグマオーシャンである「基底マグマオーシャン」はゆっくりと冷却が進むため、現在でもそのごく一部がマグマとしてマントルの底に存在している可能性があるという(地震波の超低速度領域として観察される、マントルの底の部分溶融体がそれにあたる)。
基底マグマオーシャン中で結晶化が進むにつれ、残ったマグマは鉄に富んでいく。また、微量元素も主にブリッジマナイトとの分配係数に従って、大きく変化していくとする。鉄に富む残ったマグマは密度が大きいため、マントル上昇流に巻き込まれることはないという。このことは、地表では観測されない「隠された貯蔵庫」の有力候補となる。そこで研究チームは今回、ダイヤモンドアンビルセル装置を使って、マントル物質を高圧高温状態にして融解させ、分析することにしたとする。
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