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東北大、金星大気高層において重水素を含む水が劇的に増加することを確認

マイナビニュース / 2024年8月21日 15時54分

画像提供:マイナビニュース

東北大学は8月20日、欧州宇宙機関の金星探査機「ビーナス・エクスプレス」(2006年4月に金星に到着、2014年5月運用終了)のデータを用いて、金星大気中に含まれる水蒸気のうち、水素(H)2個と酸素からなる通常の水分子(H2O)と、水素・重水素(D)と酸素からなる重い水分子(HDO)の同位体比(HDO/H2O比)が、高度70~100kmにかけて劇的に増加することを確認したと発表した。

同成果は、東北大大学院 理学研究科の狩生宏喜大学院生、同・中川広務准教授らの参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

水素の安定同位体には、原子核が陽子1個からなる通常の(軽)水素と、陽子1個と中性子1個からなるため水素のおよそ2倍の質量がある重水素の2種類がある。そのため、大半の水分子はH2Oだが、中にはHDOも存在しており、H2OとHDOでは、HDOの方が中性子1個分質量が重い。惑星大気の水蒸気にも、H2OとHDOが含まれており、一般的に地球と金星はおよそ46億年前の生まれて間もないころには、同様のHDO/H2O比を共有していたと考えられている。

これまでの研究では、この比率が金星の高度70km以下では地球に比べて120倍も高いことが観測されており、HDO/H2O比が時間と共に顕著に増加してきたことが示されていた。この増加は、水素が軽いために宇宙空間に逃げやすいことに理由がある。上層大気では、太陽の紫外線を受けて水分子が破壊され(光乖離)、その結果として水素や重水素が生成される。水素は宇宙空間に逃げていきやすいが、重水素は2倍も重いため、水素ほど容易には逃げられない。この効率の差により水素に対する重水素の比率が徐々に増加し、結果としてHDO/H2O比が時間と共に上昇してきたと考えられている。

また、長期間にわたる水分子の破壊と水素原子の散逸により、金星は初期に持っていたとされる水の大部分を失ってしまったことが推測されている(金星にも太古には海があったとされる)。つまり、金星の水進化の理解には、H2OとHDOが光乖離し、それぞれの分子がどれくらいの効率で散逸するのかを見積もることが鍵になるという。

水素と重水素が宇宙空間に逃げる量を把握するためには、太陽からの紫外線がそれらを分解できる高度、つまり雲の上部である70km以上での水の同位体異性体の量を測定することが重要となる。そのため、ビーナス・エクスプレス搭載の分光器「SOIR」のデータが分析された。その結果、高度70~110kmにおいて初めて、H2OとHDOの分布を導出することに成功したとする。

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