京大など、脊髄損傷後のリハビリでの運動麻痺改善に重要な脳内経路を確認
マイナビニュース / 2024年8月26日 11時18分
なお化学遺伝学的手法とは、神経細胞に人工的に作成された特殊な受容体遺伝子を発現させ、薬剤を投与することで薬剤が受容体に結合し、神経細胞の伝達機能を一時的に遮断させる手法である。同手法を用いると、特定の神経経路を阻害する前後において、運動機能や脳活動の比較評価を実施することで、阻害された経路の役割・機能を調べることが可能だ。さらに同手法は薬剤を使用するため、可逆的に神経活動を阻害することが可能であり、健常時・皮質脊髄路損傷時、それぞれでの運動機能を比較することもできるとする。
そしてその結果、健常時にはこの運動前野間の半球間経路を遮断しても、運動機能は影響を受けないことが判明。しかし片側の皮質脊髄路を損傷したサルにおいて、回復早期の段階でこの半球間経路を遮断すると、回復していた運動機能が再度悪化することが確認された。
また皮質脳波活動の記録・解析から、健常時ではこの半球間経路を遮断した場合には投射先(反対側の半球)の運動前野の神経活動が上昇するのに対し、損傷後の回復早期においては、半球間経路の遮断によって投射先の神経活動が低下することも明らかにされた。これらの結果は、通常抑制的に働く運動前野間の半球間経路が、損傷後の回復過程においては促進的に働き、普段は運動に関わっていない側の運動前野を活性化することで、運動機能の回復に寄与していることが示されているという。
今回の研究で示されたように、中枢神経損傷後には損傷を免れた神経経路が機能を変化させ、障害された機能の回復に関わると考えられるとする。研究チームは今後、脳梗塞など、今回とは異なる中枢神経部位での損傷によって回復に関わる経路やメカニズムを調べ、損傷部位による相違点や、共通する回復機構を解明していきたいと考えているとした。
また、今回は運動機能回復に関わる半球間経路を遮断することでその役割が解明されたが、今後は化学遺伝学的手法や、あるいはより低侵襲的な脳刺激法などを用いて同経路を賦活化させることで、運動機能回復を促進できるかどうかも調べたいとしている。従来のリハビリテーションに加え、標的経路を賦活化するような脳刺激法を組み合わせることで、これまで深刻な後遺症を残してきた重度の中枢神経損傷に対する神経リハビリテーション療法の発展が期待できるとしている。
(波留久泉)
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