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吉川明日論の半導体放談 第311回 GelsingerはIntelを復活に導くか?

マイナビニュース / 2024年8月28日 7時30分

Gelsingerが熱っぽく語るのが、1985年のIntelの歴史的大転換である。それまでの主力であったDRAMビジネスから撤退し、マイクロプロセッサーに資源を集中するという大英断を下したのが当時のCEO、Andy Grove(2016年没)だった。その大転換後IntelはPC/サーバー市場の急成長に乗って大企業となり、「世界最大の半導体企業」の冠を20年以上守り続けた。半導体業界のレジェンドとなったGrove直系の秘蔵っ子と言える存在であるGelsingerの語りは、存亡の危機にあるIntelのCEOとして生き残りをかけた大転換の決断を主導する責任者としての凄味がある。そこにはシリコンバレーを代表する世界的企業としてのIntelのプライドが満ちていて、「Intel復活」という大役を果たせるのはGelsinger以外には考えられないという印象を持った。

40年前とは大きく変わった半導体市場

しかしGelsingerが語る「Intelの大転換」の成功には大きな壁が立ちはだかる。40年前のDRAM撤退の原因となったライバルは東芝、日立、NECなど日本のメモリー半導体企業であったが、現在Intelが立ち向かう状況は構造的に複雑なものになっている。

現在のIntelのライバルは、x86 CPU分野での仇敵AMD、ファウンドリビジネスで世界市場の60%以上のシェアを持つTSMC、それにAIブームに乗って「世界最大の半導体企業」というIntelの冠を奪ったNVIDIAである。40年前の半導体業界は、設計と製造を一貫して行う垂直統合型のIDMビジネスモデルが主流であったが、現在ではファブレス企業とファウンドリ企業が緊密に協業する構造となっている。高度に装置産業化している半導体ビジネスは、四半期ごとの決算にとらわれない長期戦略がカギだ、というのはドレスデンをはじめとする自社ファブを売却(後にGlobalFoundries社となる)してファブレスとなったAMDに長年勤務した経験から私的には非常に納得がいく点だが、構造変化が激しい現在にあって、IntelのIDM 2.0での復活には下記の懸念点がある。

ファウンドリ市場で独走を続けるTSMCとIntelの間にはプロセスノード技術で2世代以上のギャップが生まれている。このギャップをどうやって埋めるか。
世界最大の半導体企業として業界に20年君臨したIntelだが、ファウンドリビジネスの経験は皆無である。他企業との緊密な協業を前提とするファウンドリのビジネスモデルでIntelは業界から支持を得ることができるだろうか。
IDM 2.0が結果を出すのは早くても2025年の後半と考えられる。その時の市況はTSMC以外の巨大ファウンドリ企業を必要とする規模になっているかはわからない。しかも足元のビジネス状況は非常に厳しい。CPUではAMDにシェアを奪われ、AI半導体の主導権はNVIDIAが持っている。IDM 2.0実現に必要な資金投入の継続は可能なのか。

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