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阪大など、量子シミュレーション性能を向上させる「局所仮想純化法」を開発

マイナビニュース / 2024年8月26日 20時10分

画像提供:マイナビニュース

大阪大学(阪大)、日本電信電話(NTT)、中央大学、東京大学(東大)の4者は8月22日、物理学の基本的な概念である「局所性」を応用し、量子コンピュータにおけるシミュレーション性能を大きく向上させる新手法として「局所仮想純化法」を開発したことを共同で発表した。

同成果は、阪大大学院 基礎工学研究科/量子情報・量子生命研究センターの箱嶋秀昭助教、NTT コンピュータ&データサイエンス研究所の遠藤傑准特別研究員、同・山本薫研究員、中央大 理工学部の松崎雄一郎准教授、東大大学院 工学系研究科 物理工学専攻の吉岡信行助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

量子力学に従う複雑な現象は、従来のコンピュータではシミュレーションが困難であることが知られており、複雑な現象を理解し制御することのボトルネックになっている。そうした自然現象を効率的に調べるために有効な手段と考えられているのが、量子シミュレーション。たとえば、巨視的に見て変化しない状態である「熱平衡状態」や、量子力学の基本原理であるシュレディンガー方程式に従った系の時間発展のことである「非平衡ダイナミクス」を扱うシミュレーションにおいては、量子力学的な効果が大きく現れる場合、従来のコンピュータでは非常に困難と考えられており、量子シミュレーションの応用が威力を発揮するとして注目されている。

しかし、これまでの量子デバイスには、実験的な制約があるため、すべてのタスクを量子デバイス上で行うことが難しいという課題を抱えていた。実験的な制約とは、たとえば冷却温度の限界や環境からのノイズの影響のことをいう。この課題に対処するために先行研究で提案されたのが、複数の状態に量子もつれを作って測定を行う「もつれ測定」を利用した、「量子状態の純度」(1つの状態ベクトル(波動関数)だけで表されるような状態のこと)を仮想的に高める方法である「仮想冷却法・仮想蒸留法」。

しかし、扱う問題のサイズが大きくなるにつれて測定回数が指数関数的に増大し、量子シミュレーションが威力を発揮するはずの大規模なサイズの問題に対処できなくなってしまうという困難を抱えていたという。そこで研究チームは今回、局所性という物理学の基本概念を考察し、量子シミュレーションに必要なもつれ測定を全域ではなく、着目する局所領域に限定する新しい手法である局所仮想純化法を提案することにしたとする。なお局所性とは、ある地点で起きた出来事により、遠くの実験結果が直ちに変わることはない、という性質のことを指す。

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