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阪大と富士通、量子コンピュータの性能を向上させる実用アルゴリズムを開発

マイナビニュース / 2024年8月29日 17時43分

画像提供:マイナビニュース

大阪大学(阪大)と富士通は8月28日、量子コンピュータの早期実用化に向けて、共同開発している高効率位相回転ゲート式量子計算アーキテクチャ「STARアーキテクチャ」について、位相回転操作時の位相角の精度を向上させる技術、および量子ビットの効率的な操作手順を自動生成する技術を開発したことを共同で発表した。

同成果は、阪大 量子情報・量子生命研究センターの藤井啓祐教授(同・大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻電子光科学領域 量子コンピューティング研究グループ兼任)、富士通らの研究チームによるもの。

量子ゲート式量子コンピュータは、さまざまな分野で現行コンピュータよりも遥かに短時間で回答を得られるとして期待されているが、計算中にエラーが発生しやすい点が課題だという。つまり、正確な計算を行うためには、大量の量子ビットを使ってエラーを防止する必要がある。実用的な計算を現実的な時間内で行うには100万量子ビットが必要と試算されており(FeMoco(酵素活性中心)のエネルギー推定問題をエラー率0.1%の条件下で解くために必要な量子ビット数の試算結果)、その実現にはかなりの年月を要すると予想されていた。

そうした中、阪大と富士通は2021年10月から開始した共同研究の一環として、エラー訂正に基づく量子計算技術の研究開発をスタート。その成果として2023年3月に発表されたのが、STARアーキテクチャ。同技術により、量子計算に欠かせない位相回転操作を効率的に実行することで、これまで提案されているFTQC(量子エラーを訂正しながら誤りなく量子計算を実行すること)アーキテクチャよりも、少ない量子ビットと短い時間で計算を実行できる可能性がもたらされたのである。

ただし、STARアーキテクチャの実用化には、以下の2つの課題があるという。

位相回転ゲートのエラーを訂正しない代わりに精度を高く保つ工夫をしているが限定的であり、計算可能な規模に限界があること
具体的な計算問題を解く際に、同アーキテクチャ自体の基本的な計算ルールである論理ゲートは明らかになっているものの、その計算問題に適した量子ビットの操作方法である物理ゲートの手順が確立されていないこと

そこで研究チームは今回、これらの課題の解決に挑むことにしたとする。

今回の研究では、まずSTARアーキテクチャでの計算規模は位相回転操作における位相角の精度で決まるため、精度が落ちないように、エラー耐性を強化した位相角の準備方法が再構築され、エラーを1000分の1に抑制する新しい位相回転技術が開発された。これにより、材料物性計算において1000倍の計算規模拡大に成功し、これまでこのアーキテクチャでは不可能だった複雑な計算、たとえば、将来的には電力インフラの送電ロス削減などにもつながる可能性のある、高温超伝導体開発のための理論モデルである「ハバードモデル」のエネルギー推定計算が可能になったという。

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