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東工大など、フッ素の中性子過剰核「30F」でも魔法数20の消失を確認

マイナビニュース / 2024年8月29日 18時49分

画像提供:マイナビニュース

東京工業大学(東工大)と理化学研究所(理研)は8月28日、理研 RIビームファクトリー(RIBF)において、フッ素の同位体としてはこれまでで2番目に重く、陽子の倍以上も中性子が過剰な「30F」(陽子数9・中性子数21)を観測し、魔法数20の消失を確認したことを発表した。

同成果は、東工大 理学院 物理学系の近藤洋介助教、同・中村隆司教授、理研究所 仁科加速器科学研究センターの大津秀暁チームリーダー、同・上坂友洋部長らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

中性子や陽子の個数が2、8、20、50、82、126個という特定の数の時、原子核はより安定になるという性質があり、これらは「魔法数」と呼ばれている。しかし中性子過剰核では、こうした魔法数が消失したり、逆に新しい魔法数が出現したりすることがわかってきている。たとえば、ネオン(陽子数10)やマグネシウム(陽子数12)の中性子過剰核では、魔法数20の消失が確認されていた。そのため、より陽子数の少ないフッ素でも魔法数が消失するのかどうかかが注目されていた。そして最近の研究から、魔法数破れの兆候はフッ素の同位体の「28F」や「29F」についても示されつつあったという。

一方、液体ヘリウムに現れる超流動状態が、孤立した原子核でも出現することは以前より知られていたが、中性子数が陽子数の2倍を超えるような中性子超過剰核での超流動状態については不明だった。研究チームが昨年初観測した中性子過剰核の酸素の同位体「28O」(陽子数8、中性子数20)では、魔法数の破れに伴ってさまざまな軌道を往きかう中性子対によって超流動状態になっているという予測があり、陽子数と中性子数が共に28Oに近い30Fの構造が注目されていたとする。さらに、この30Fの質量観測は、未知の中性子間力である「三中性子間力」に対する制限を与えるという。そこから中性子星の構造や中性子星合体のメカニズムで重要な役割を果たす、中性子物質の状態方程式にも重要な知見を与えることも期待されている。そこで研究チームは今回、30Fの生成とその同定を試みることにしたとする。

これまで知られている最も重いフッ素同位体は「31F」(中性子数22)だが、30Fはそれよりも中性子が1個少ないが、31Fに比べて寿命が極めて短いために捕捉が難しく、これまで観測できていなかったという。今回の研究では、ネオンの同位体の「31Ne」(陽子数10・中性子数21)を陽子標的に衝突させて陽子を1個叩き出すことで、30Fが生成された。30Fの寿命は約10のマイナス22秒しかなく、中性子1個を放出してすぐに29F(中性子数20)に崩壊してしまう。それでも、その崩壊過程の観測に成功し、30Fの生成が確認され、同時にその質量も決定された。

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