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分子研など、半導体光触媒上で水素生成反応に寄与する活性な電子種を解明

マイナビニュース / 2024年9月3日 19時10分

画像提供:マイナビニュース

分子科学研究所(分子研)と総合研究大学院大学(総研大)は8月29日、独自開発の周期的な光励起下における「オペランド赤外吸収分光法」により、半導体光触媒上でのメタンや水分子からの水素生成反応に寄与する活性な電子種の正体を明らかにしたと発表した。

同成果は、分子研の佐藤宏祐博士研究員、同・杉本敏樹准教授(総研大兼任)の研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する機関学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

半導体である酸化物光触媒に励起光が照射されると、伝導帯に光誘起電子が生じ、それは1ピコ秒以内の時間スケールで速やかに種々の捕捉準位にトラップされる。それらの安定化した電子の一部が、水素を含む分子種から生じた陽子を還元することで、水素が生じる。還元反応の時間スケールはミリ秒程度と比較的遅いため、電子の寿命を延ばすことを意図して、酸化物半導体上に金属がしばしば担持されてきた。

これまで一般的に、担持金属は活性な光誘起電子をその内部に捕捉・蓄積することで光誘起電子を長寿命化させ、陽子からの水素生成反応を駆動させる還元反応場として機能するものと考えられてきた。しかし、このような金属を担持した光触媒における活性電子種の挙動や反応メカニズムなどの微視的な実像には迫れておらず、実用化に向けたさらなる活性向上・研究加速に向けた指針は十分に得られていなかったとする。そこで研究チームは今回、独自のオペランド赤外吸収分光法を用いて、半導体光触媒上でのメタンや水分子からの水素生成反応に寄与する活性な電子種の正体を解明することにしたという。

赤外吸収分光法は、触媒試料にダメージを与えることなく、光誘起電子の存在量やエネルギー準位といった、反応メカニズムの微視的な理解の鍵となる情報を得ることが可能だ。しかし従来法では、光誘起反応における活性電子種のような微弱な分光信号(吸光度10-4~10-3程度)は、試料温度の上昇により熱的に誘起された電子由来の巨大なバックグラウンド信号(吸光度10-2~10-1程度)に埋没してしまうとする。

そこで今回の気研究では、光触媒反応の典型的な時間スケールであるミリ秒オーダーの周期で励起光の照射・非照射を繰り返すことで、定常的な水素生成の進行を維持したまま、照射時と非照時の温度変化を1℃以下に抑制できることが見出された。さらに、この励起光の変調周期にマイケルソン干渉計を同期させてオペランド赤外吸収分光を実施することで、熱誘起電子由来の信号が大幅に取り除かれている状況で、光誘起電子種の微弱な分光信号を高感度に観測することに成功したという。

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