分子研など、半導体光触媒上で水素生成反応に寄与する活性な電子種を解明
マイナビニュース / 2024年9月3日 19時10分
白金やパラジウムのような金属を担持した酸化ガリウム(Ga2O3)半導体光触媒試料における、水素生成を伴うメタン水蒸気改質反応(CH4+2H2O→4H2+CO2)や水分解反応(2H2O→2H2+O2)に対して、このオペランド赤外吸収分光法が適用された。その結果、担持金属の内部に存在する自由電子、Ga2O3半導体の伝導帯から0.26eV程度安定化した比較的浅いトラップ準位の電子(ST電子)、0.52eV程度安定化した比較的深いトラップ準位の電子にそれぞれ由来する赤外吸収が観測されたとする。これらの電子種のうち、ST電子由来の吸収帯の強度のみに、水素生成速度と良く相関した変化が確認されたとした。以上のことから、従来考えられてきた描像とは異なり、担持金属に蓄積された自由電子ではなく、半導体中の浅い準位に捕捉された電子が陽子の還元反応による水素生成(2H++2e-→H2)に直接的に貢献していることが示唆されたのである。
さらに、この反応活性なST電子は担持金属の周囲に局在しており、金属の元素種に依存して活性電子の捕捉能が変化することも解明された。これまで一般的には、担持金属は内部に光誘起電子を捕捉し還元反応場として機能するものと考えられてきたが、詳細な検討により、実際は酸化物半導体との界面に反応活性な電子をため込み還元反応場を形成しているという新たな描像が浮かび上がってきたという。
今回の研究成果は、効率的かつ低環境負荷な形で水素を生成するための界面エンジニアリング戦略の基礎学理となることが期待されるとする。また今回の研究で開発された分光スキームは、超短パルスレーザーではなく連続光の照射に基づいており、実際の触媒反応環境により近い状況を保持したまま、活性種の微弱信号を抽出することを実現した。今回の手法は光や電場によって駆動されるさまざまな反応系に広く適用可能なオペランド分光分析技術であり、カーボンニュートラル・持続可能社会の実現に向けて、さまざまな環境・エネルギー関連化学技術の開発研究への応用が期待されるとしている。
(波留久泉)
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