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阪大など、XFELを用いて100兆分の1秒で固体→プラスマの遷移過程を観察

マイナビニュース / 2024年9月9日 17時56分

画像提供:マイナビニュース

大阪大学(阪大)と高輝度光科学研究センター(JASRI)は9月6日、理化学研究所(理研)の所有する施設「SACLA」のX線自由電子レーザー(XFEL)を用いた新たな計測法により、100兆分の1秒(=10-14=10フェムト秒)程度の精度を有した高速イメージングが実現され、高強度レーザーにより加熱された固体の銅薄膜内部のプラズマへの遷移過程を捉えることに成功したと共同で発表した。

同成果は、阪大 レーザー科学研究所の千徳靖彦教授、米・ネバダ大学リノ校の澤田寛准教授を中心とした、JASRI、理研 放射光科学研究センター、米・SLAC国立加速器研究所、加・アルバータ大学、米・ローレンス・リバモア国立研究所、米・ロチェスター大学の研究者も参加した20名強からなる国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

高強度短パルスレーザーは、光のエネルギーを1兆分の1(10-12=1ピコ秒)秒程度に圧縮し、波長オーダーの空間スケールに集光することで、レーザー光のエネルギー密度(光子圧)を1億(108)気圧以上に増強したレーザーのことをいう。これにより、物質を100兆分の1秒という極短時間で数百万℃から1億℃まで一気に加熱することが可能。加熱時間が短いため、物質は固体密度を維持したままプラズマ(物質から電子が剥がれた物質の第4の状態)へ相転移し、太陽内部以上の高エネルギー密度状態になるという。このような超高速加熱を「等積加熱」と呼び、既知の密度の値を持つ非平衡輻射プラズマを生成することが可能。これらのプラズマは、状態方程式や熱伝導、X線吸収過程などの原子過程の研究やレーザー核融合の基礎研究のプラットフォームとして利用されている。

しかし、高強度短パルスレーザーによる加熱現象は、現象の時定数の短さと加熱領域がmm以下と小さいため、現象の詳細を捉えることが容易ではなく、その詳細は実験では解明できていなかった。そのため、中でも密度が高い固体や高密度プラズマの内部を診断するための高空間・時間分解計測手法の開発が求められていたとする。そこで研究チームは今回、高強度短パルスレーザーにより生成された高速電子が、固体の銅薄膜を等積加熱する様子を、高空間・時間分解能を有するXFELを用いた超高速撮影に挑むことにしたという。

XFELとは、X線領域のパルス状のレーザーのことで、従来の放射光源と比較して、非常に短い時間パルス幅と高い輝度が実現されているのが特徴である。光子エネルギーが数~数十キロ電子ボルトのような硬X線領域の場合は、その高い透過性能を活かして、高密度の物質の内部の状態を観察することが可能だ。

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