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KEKなど、全固体フッ化物電池のイオン伝導メカニズムを原子レベルで解明

マイナビニュース / 2024年9月10日 7時5分

今回の研究では、中性子回折を利用した蓄電池研究を推進するためにJ-PARCに建設された、特殊環境中性子回折装置「SPICA(スピカ)」を用いて実験が行われ、さまざまな温度で固体電解質(1)の中性子回折データが測定された。同装置の特徴は、原子レベルで蓄電池や電池材料を観察できるようにデザインされている点となっている。また、良質な固体電解質(1)を作製するため、検討を重ね、熱プラズマ法が採用された。これにより、より精密な構造解析を行うことが可能となったとする。

SPICAを用いて集められたデータを用いて「リートベルト解析」を行うことで、固体電解質(1)の結晶構造(絶対温度573K=約300℃)を得ることができたとした。さらに、「最大エントロピー法」により核密度分布を求めることで、イオン伝導に必要な格子間サイト「□F」を明らかにし、「-F-□F-F-」間を結ぶフッ化物イオン伝導経路の可視化に成功したという。

結晶構造解析より得られた原子変位の大きさを示す値から、Fの配置が乱れていることを推測できるが、より具体的なFの位置を調べるため、「二体分布関数データ」を用いて「逆モンテカルロモデリング」が行われた。CaF2とBaF2の場合、Ca、BaとF原子が規則正しく配列しているが、固体電解質(1)では原子配列が乱れている様子がわかる。これは有効イオン半径が小さいCaと有効イオン半径が大きいBaが混合したことで構造の歪みが誘発され、それによってFの位置も局所的に乱れたことが考えられるとする。「-F-□F-F-」イオン伝導経路内において、CaF2やBaF2では見られなかったFの原子配列の乱れが、伝導経路内のイオン流れ(イオン伝導率)の向上に大きく寄与していることが突き止められた。

研究チームでは、今回の研究成果により、フッ化物イオン伝導体のイオンの流れに関する理解をより深めることができたと考えているという。さらに、フッ化物電池は革新型蓄電池の最有力候補の1つだが、その材料開発に大きく貢献することも期待されるとしている。
(波留久泉)



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