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JAXA、これまで困難だった「かに星雲」の硬X線画像を高解像度化に成功

マイナビニュース / 2024年9月10日 19時52分

画像提供:マイナビニュース

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月9日、2016年2月17日に打ち上げられ、通信途絶のために翌4月28日に運用が断念された日米共同開発のX線天文衛星「ひとみ(ASTRO-H)」の硬X線望遠鏡(HXT)が撮影した、1054年に出現した超新星(SN1054)の残骸と考えられているおうし座の方向に約6500光年離れた距離にある「かに星雲」の画像を、新規開発した画像復元技術を用いて高解像度化することに成功したと発表した。

同成果は、JAXA 宇宙科学研究所(ISAS) 科学衛星運用・データ利用ユニット森井幹雄の主任研究開発員、ISAS 宇宙物理学研究系の前田良知助教、同・石田学教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する欧文学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。

「ひとみ」に搭載されていたHXTは、硬X線帯域(約10キロ電子ボルト以上の高エネルギーX線のことで、それ以下は軟X線と呼ばれる)で最も集光力が高い望遠鏡であり、高い角度分解能を持つ。その運用初期段階で、観測装置の較正を行うために利用されたのが「かに星雲」だ。同星雲は、中心に存在する強い磁場を持ち高速回転する中性子星の「かにパルサー」のパルサー磁気圏(中性子星の磁場の影響が強く及んでいる領域)で加速された高エネルギー粒子が発する電磁波によって輝くパルサー星雲。今回の研究では、HXTで撮像された「かに星雲」の画像に対し、画像復元技術「Image Deconvolution」を用いた、画像を高解像度化する新規のアルゴリズムを開発することにしたという。

「かに星雲」の大きさはHXTの角度分解能と同程度であり、その上、中心の「かにパルサー」は桁違いに明るいため、高解像度化処理が困難な天体だとする。そうした中で今回の高解像度化で用いられたImage Deconvolutionとは、望遠鏡などの光学系で撮影された画像に対して、光学系による歪みやボケなどを補正して元画像を復元するために用いられる画像処理技術のこと。そして今回の技術で画像処理が行われた結果、処理前はパルサーと星雲の分離が困難だったが、星雲の構造を把握できるようになったとした。この高解像度化された画像から、「かに星雲」はエネルギーが高くなるほどサイズが小さくなるという結果も新たに得られたとのことで、同星雲の放射モデルに制限を与える重要な観測結果とした。

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