理研、老化すると組織幹細胞も疲弊することをハエから発見
マイナビニュース / 2024年9月12日 6時41分
理化学研究所(理研)は9月10日、ショウジョウバエを用いて、個体の老化に伴って腸の組織幹細胞が疲弊していく際に、染色体の特定領域の構造と遺伝子発現が変化することを発見したと発表した。
同成果は、理研 生命機能科学研究センター 動的恒常性研究チームのユ・サガン チームリーダー(理研 開拓研究本部 Yoo生理遺伝学研究室 主任研究員兼任)、同・内藤早紀特別研究員、同・シヴァクシ・スレク特別研究員(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱う学術誌「iScience」に掲載された。
組織幹細胞は、人体のさまざまな組織に存在する未分化な細胞であり、組織の維持や再生に寄与する(ヒトの場合、再生できない器官も多い)。老化すると組織幹細胞の機能に異常が起こり、過剰に増殖してがん化したり、反対に正常な増殖能を失って「幹細胞疲弊」と呼ばれる状況に陥ったりすることがわかっている。
ヒトにおいて、細胞のがん化の分子機構は理解がかなり進んでいる一方で、老化に伴って起こる幹細胞疲弊の分子機構はまだその多くがよくわかっていない。そうした中、研究チームのこれまでのショウジョウバエを用いた研究で突き止めたのが、その腸幹細胞が老化によってがん化する機構。そこで今回の研究では、この実験系を用いて、老化に伴い、どのような分子機構で幹細胞疲弊が起こるのかの解明に挑むことにしたという。
幹細胞疲弊の分子機構を調べるために研究チームが着目したのが、ショウジョウバエの腸幹細胞において、老化に伴う染色体構造と遺伝子発現の変化。若齢と老齢のショウジョウバエについて、染色体構造が「ATAC-seq」手法で、遺伝子発現が「RNA-seq」手法で、それぞれ解析が実施された。なお、ATAC-seqは、染色体の構造が、開いているか閉じているかを判別する手法で、開いていればその領域の遺伝子が発現しやすく、逆に閉じていれば発現しにくいことがわかる。またRNA-seqは、遺伝子が発現(転写)されてできるmRNAの量を定量することで、遺伝子の発現量を解析する手法だ。そして解析の結果、オスとメスの両方において、老化に伴い染色体構造と遺伝子発現の両者が変化することが確認された。
次に、染色体構造の変化が見られたDNA領域に対する詳細な解析が行われた。すると、転写因子「Trl」によって発現制御される遺伝子が多く発見されたという。これらの遺伝子領域の染色体構造は老化に伴い閉じていき、その発現も低下する傾向にあったとした。
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