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九大など、室温下でも多彩な分子の識別が可能な量子センシング手法を提案

マイナビニュース / 2024年9月12日 15時6分

画像提供:マイナビニュース

九州大学(九大)、分子科学研究所(分子研)、名古屋大学(名大)、東京大学(東大)の4者は9月10日、室温下でさまざまな分子を識別可能な「量子センシング」手法を分子中の電子スピンを量子ビットとして用いることで実現する手法を提案したことを共同で発表した。

同成果は、九大大学院 工学研究院の山内朗生大学院生、同・楊井伸浩准教授(現・東大大学院 理学系研究科 教授)、分子研 機器センターの浅田瑞枝主任技術員、同・中村敏和チームリーダー、名大大学院 工学研究科のPirillo Jenny特任助教、同・大学 未来社会創造機構脱炭素社会創造センターの土方優特任准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

量子コンピューティングにおいて基本的な構成要素となるのが量子ビット。従来の(古典)コンピュータのビットは0か1かのどちらかを扱うが、それらに加え、0と1のどちらでもある重ね合わせの状態も扱えるのが量子ビットである。そして、その量子力学的な性質を利用したセンシング手法が、量子センシングだ。

量子センシングは、特定の量子状態が外部環境に極めて敏感に応答するという優れた点を活かし、従来に比べて高い感度や分解能でのセンシングを実現できるとして期待されている。その代表例の1つが、ダイヤモンド中の「窒素-空孔欠陥中心(NVセンタ)」で、温度や磁場といった物理パラメータを高感度に検出することが可能だ。しかしその一方で、センサ部位がダイヤモンド中の奥深くに存在するため、分子やイオンといった化学種のセンシングが難しく、またその欠陥構造の制御が困難という課題も抱えていた。

それに対し、分子の電子スピンを用いた「分子性量子ビット」は検出対象の化学種と近接して相互作用でき、化学修飾によって構造を厳密に制御することが可能。ただし、量子ビットとして利用可能なスピンの割合(スピン偏極率)が室温では通常極めて小さい(~0.1%)ため、高いスピン偏極率が得られる極低温下の応用が大半であり、量子ビットを用いて室温でさまざまな化学物質のセンシングが行える手法は開発できていなかったという。

そこで研究チームは今回、室温でも利用可能な分子性量子ビットである「光励起三重項電子スピン」(70~80%程度と多くのスピンが利用可能)と、ナノ多孔性材料の「多孔性金属錯体」(MOF)を用いて、室温下でさまざまな分子を識別するための量子センシング手法の提案を行うことにしたとする。

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