水蒸気の上に水が存在? 茨城大、シミュレーションでその可能性を発見
マイナビニュース / 2024年9月13日 18時47分
茨城大学と京都大学(京大)は9月12日、分子動力学計算による数値シミュレーションを用いて、気体と液体が共存する状態で重力に拮抗する弱い熱流をかけると、沈んでいた液体が気体の上に浮き上がり浮遊し続けることを発見したと共同で発表した。
同成果は、茨城大大学院 理工学研究科の吉田旭大学院生(現・京大 特定研究員)、同・大学 理学部の中川尚子教授、京大 理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻物性基礎論講座の佐々真一教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
地上では、水を沸騰させて100℃に達した場合、重力の働きがあるため、質量密度の重い沸騰した水(お湯)が下で、質量密度の軽い水蒸気は上に位置する。しかし、これが条件によっては変化し、無重力(微小重力)環境下で、なおかつ容器内に温度差があり熱流が流れていれば、たとえば容器の底側よりもフタ側が低温の場合、水は温度が低い方がより安定となるため、水の方がフタ側に移動することになる。
このことは、地上であっても容器内に温度差を生み出せれば、重力の影響と、水を浮上させる熱流の影響を拮抗させることが可能になる。この時、水と水蒸気の位置がどうなるのかという問題は、水に限らず一般的な液体と気体すべてに当てはまることだが、これまで理論的にも実験的にも実は議論されないまま残されていたという。
そこで研究チームは今回、希ガス(アルゴンやキセノン)の熱力学的性質を再現するモデルとして知られる「レナード=ジョーンズ粒子系」に着目。同粒子系は、気体と液体の相転移を示すため、気体と液体が共存する飽和状態を再現できるのが特徴。そして同粒子系を用いて分子動力学計算を実施し、液体と気体の位置関係を確かめることにしたという。
今回の研究では、まず密閉容器内にレナード=ジョーンズ粒子系を入れて飽和状態にし、次に重力をかけ、液体が下に沈んだ状態とされた。その上で、容器の底の温度を少し高く、逆に容器のフタの温度を少し低くし、重力と逆向きの熱流が発生するよう設定された。液体と気体の位置関係が重力と熱流によってどのように変化するのか、設定をさまざまに変更して系統的な調査がなされた。すると、重力と熱流の影響が拮抗したと見られる状態では、液体が重力に抗って浮き上がることが判明。浮きあがった液体は、容器の真ん中で浮遊したまま静止していたという。
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