どこでもサイエンス 第292回 火星の石、ですって?
マイナビニュース / 2024年9月18日 7時34分
まあ、それでもなんとかしようというのがアメリカの計画なわけですが、早くて、2033年、しかもドリルで掘ったサンプルなので、石がごろんというサンプルではないでしょう。おそらく。
さて、じゃあ、その火星の石を、なんで日本が展示できるの? 世界のどこにもないのに? というと、火星から飛んできた隕石であるというのが答えなんですな。なんかネットでは「えー、インチキや」という声も聞こえるのですが、インチキではありません。紛れもなく、火星の大地にあった石が、地球にやってきたものなのです。人類がまだやれていないことを自然の力で。
さきほど書いたように、火星の石を宇宙空間に持ち上げるのは、その重力ゆえかんたんではありません。小惑星だとなんかの弾みに飛び出すこともあるわけですが、火星はそうはいかないわけです。
しかし、火星には多数のクレーターがあり、火星に巨大な隕石が何度も衝突したことはわかっています。その大規模衝突の反動は、火星の大地を一部宇宙空間に飛ばすパワーがあるわけでございます。
そうして火星から宇宙に飛び出した石が、巡り巡って地球に落下。隕石となり、かつ日本の南極観測隊に南極で採取されたものが、今回展示されるというわけなんですな。
しかし、なんというか気が遠くなる偶然ですね。だいたいなぜ火星の石だとわかるかという点があるわけです。これについては、他にも火星からの隕石と目されるものがいろいろあるのですが、その特徴として、まず石ができてからの時間の短さがあげられています。
通常の隕石は、小惑星帯からやってきます。小惑星帯は太陽系の誕生した46億年前に形成された微惑星の生き残りと考えられますので、非常に古いわけです。石の年齢は通常、作られた時から放射性物質が壊れ、安定物質に変わっていく割合で調べられます。地球の古い年代もそうして調べられております。結構難しいそうなのですが。
で、火星からの隕石とされているものは、この年代測定でずっと若い年齢が出ているのでございます。あ、ちなみに1個ではありません。数十以上のサンプルが知られています。で、火星からの隕石は、いくつかの特徴があることがわかっています。こちらの東大総合博物館の解説がすっきりとしています。あ、平塚市博物館のものもいいですな。
さて、そんな火星からの隕石ですが、有名なサンプルはアメリカが南極のアランヒルズで採取した「ALH84001」ですね。この隕石を分析したところ、微生物の化石のような構造が見えました。ちなみに41億年前に生成された石ということが分かっていたので、もしこれが実際に生物であれば、火星にも生物が発生したという証拠と共に、地球と同じかむしろ前に火星に生命が誕生した証拠ということになり、ものすごい話題になりました。えー、かれこれ20年以上前の話ですね。しかし、その後、無機的に同様な構造ができることがわかり、生命説はほぼ消滅しています。
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