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理研と東大、「スキルミオン」を電流で自由に駆動できることを実証

マイナビニュース / 2024年9月20日 20時53分

画像提供:マイナビニュース

理化学研究所(理研)と東京大学(東大)の両者は9月19日、固体中の電子スピンが形成する渦状の磁気構造体である「スキルミオン」の運動を電流によって誘起し、同磁気渦をほぼ自由に駆動できることを実証したと共同で発表した。

同成果は、理研 創発物性科学研究センター(CEMS) 強相関量子伝導研究チームのマックス・バーチ基礎科学特別研究員、同・十倉好紀チームリーダー(東大卓越教授/東大 国際高等研究所東京カレッジ兼任)、CEMS 強相関理論研究グループの永長直人グループディレクター(最先端研究プラットフォーム連携 事業本部 基礎量子科学研究プログラム プログラムディレクター兼任)、CEMS トポロジカルエレクトロニクス研究チームの川村稔チームリーダー、東大大学院 工学系研究科 物理工学専攻のマックス・ヒルシュベルガー准教授(CEMS トポロジカル量子物質研究ユニット ユニットリーダー兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

物質中の伝導電子がスキルミオンの格子を通過すると、量子力学的位相の「ベリー位相」を獲得し、創発磁場を作り出す。そして同磁場は通常の磁場と同じように、電子の動きを偏向する「トポロジカルホール効果」を生み出す。スキルミオンが運動することで誘導された新たな電場は、同効果によって生じたホール電圧の逆方向であるため、スキルミオンの速度が伝導電子の速度に追い付くにつれて、「ホール電圧」を減少させる。つまり、同効果の電圧を測定することで、スキルミオンの速度を高感度に測定できる可能性がある。しかしこれまでのところ、その可能性は十分に検証されていなかったという。

そこで研究チームは今回、これまでで最大のトポロジカルホール効果を示し、大きなホール電圧が得られるスキルミオン物質である「Gd2PdSi3」の大きな単結晶からマイクロメートル程度の大きさのデバイスを切り出し、その電気伝導特性を低温で測定することで、スキルミオンのダイナミクスを観測することにしたとする。

Gd2PdSi3デバイスに流れる電流を増加させながら、トポロジカルホール効果の電圧が測定された。すると、スキルミオンがGd2PdSi3結晶に対して静止している状態から、同磁気渦が流れている状態への動的遷移を観察できたとした。

スキルミオン物質中における伝導電子の運動は、複雑な量子力学で記述されるため、伝導電子の速度は明確には定義できず、低速度で運動する物体に適用できる「ガリレオ相対性」は保証されない。伝導電子は電子バンドという複数の量子力学状態から編成されており、バンドによって異なる速度を有する。これらの速度は、通常、伝導電子が物質中の欠陥によって散乱してエネルギーを散逸させる運動量緩和プロセスによって決定されるため、一般的には全電子バンドの伝導電子からの寄与が完全に打ち消し合ってトポロジカルホール効果が消失するという保証はないという。

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