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吉川明日論の半導体放談 第313回 AMDやIntelと深いかかわりあいのあるPlayStationの半導体

マイナビニュース / 2024年9月24日 14時44分

2013年に発表されたPlayStatiion 4(PS4)のエンジン選定の時期はその3-4年前の2009年頃だったと私は記憶している。カナダのグラフィックプロセッサー会社ATI社を買収したAMDは、CPU+GPUのヘテロ構造をとる最新のAPUアーキテクチャーを提案した。対するIntelは無数の小規模CPUコアを集積した“Larrabee”を提案してきた。PlayStationの技術陣にとっては、エンジンの選定は肝であり、多くのアプリケーションソフトを効率よく実行するハードウェアには世代ごとに新たなアーキテクチャーを取り入れる労力をいとわない意気込みが十分に感じられた。結局、AMDの提案が採用されたが、PlayStation側は当時、AMDとIntelが係争関係にあったことを懸念していて、「2-3年後に発表される予定の製品にAMDがカスタムチップを大量に供給できるのかどうか」について、私自身、係争の経緯などの説明のために本社の法務部門のトップと共だって訪問した記憶がある。カスタムチップの選定は足が長いものである。
PlayStation 6でのエンジン選定を読み解く

そんな思い出があるので、今般のPS6のエンジンに関するロイター通信による記事は大変興味深く読んだ。記事によると、PS6のエンジンには最終的にAMD、Intel、Broadcomの3社が検討されたが、コストと既存ソフトとの後方互換性の観点から、AMDの提案に落ち着いたということだ。

記事によると、交渉が行われていたのは2022年ころであり、この時期のAMDはTSMCとの協業が本格化したころである一方、Intelがファウンドリ会社の設立について大々的に発表していた時期である。ハイレベルな交渉がPlayStation側とAMDないしIntelの間で行われていたらしい。記事では両社の提案の内容まで述べてはいないので部外者の私には知るべくもないが、AMDが後方互換性について優位に立っていたことは容易に想像できる。PS4/PS5にまたがってAPUを供給したAMDのハードウェアベースで書かれた多くのゲームアプリはその後も進化を続け、引き継がれているので後方互換性を勘案すれば、新アーキテクチャーに移行する理由としては、そのリスクを払しょくするだけの余程の性能が求められる。かつて、CPU市場で常にIntelを追う形だったAMDは、後方互換性について顧客を説得するのに多くの労力を要したが、PlayStationの場合はこの逆であったことは皮肉な現実である。

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