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北大、ゲノム編集効率を大幅に改善する脂質ナノ粒子の高機能化に成功

マイナビニュース / 2024年9月30日 6時15分

画像提供:マイナビニュース

北海道大学(北大)は9月26日、ドラッグデリバリー技術(DDS)用の「ゲノム編集用脂質ナノ粒子」の大幅な効率の改善に成功したと発表した。

同成果は、北大大学院薬学研究院の佐藤悠介助教、同・原島秀吉教授、同・大学院 生命科学院の小沼はるの大学院生(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱う学術誌「iScience」に掲載された。

「CRISPR/Cas9」などのゲノム編集技術を治療に役立てるには、それらを標的組織や細胞だけに安全かつ効率的に送達する必要があり、その手段としては、DNA、mRNA、そして「RNP」を用いる方法がある。DNAやmRNAを用いる方法は多くの過程が必要な上に、標的ゲノム領域以外でのゲノムDNA切断(オフターゲット切断)が起きてしまう危険性が高まるという課題があった。

RNPとは、CRISPR/Cas9において標的配列の認識を担う核酸「gRNA」と、標的配列の切断を担う「Cas9タンパク質」との複合体のことだ。RNPの場合は、細胞内で核への移行過程でのみゲノム編集を行える。加えて、RNPが細胞内に存在する時間はとても短いので、オフターゲット切断の危険性も低減できるという。しかしRNPによる送達は低効率で、実用的な製造方法も確立されていなかった。

そうした中、研究チームはRNPを内封した脂質ナノ粒子(LNP)製剤「CRISPR-LNP」を開発し、マウスの肝臓で標的遺伝子のノックアウトの誘導に成功。LNPは、薬物を目的の組織や細胞に送達するためのDDSの1種。しかし、RNPを効率的に送達するためのLNP構成脂質、特に最も主要な成分であるイオン化脂質の最適化は行われておらず、RNP送達効率に課題が残されていたという。そこで今回の研究では、既存のイオン化脂質を基にした構造最適化を試みることにしたとする。

イオン化脂質の疎水性分岐足場構造が着目され、総炭素数と分岐位置を系統的に変更したイオン化脂質ライブラリーが設計された。各イオン化脂質を用いて作製されるCRISPR-LNPのゲノム編集効率を比較することで、最適なイオン化脂質の同定が目指された。そして、さまざまなイオン化脂質の中から、最も高いゲノム編集効率を示したのが、「CL4F11_ζ(ゼータ)-2」(以下、「ζ」)だったという。

続いて、ζ含有CRIPSR-LNPの投与量依存的なゲノム編集効率が調べられた結果、最大投与量である2mgRNP/kgにおいて、標的TTRタンパク質が98%以上抑制されたという。この値は、すでに承認済みのものの80~85%を大幅に超える値であり、治療効果を得るのに十分であると考えられるとした。

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