北大、ゲノム編集効率を大幅に改善する脂質ナノ粒子の高機能化に成功
マイナビニュース / 2024年9月30日 6時15分
また、最適化前と比べ、ゲノム編集効率を約10倍にまで向上させることができたという。それに加え、ζ含有CRIPSR-LNPを単回投与してからTTRタンパク質をモニタリングした結果、12週間後も抑制効果が持続していることが確認された。肝臓中のゲノムDNAを取り出し、標的TTR遺伝子領域の編集割合を解析したところ、約80%のゲノムDNAの編集が認められたほか、すでに臨床で用いられているLNP3製剤に採用されている各イオン化脂質とのゲノム編集効率が比較されたところ、ζは著しく高効果を示すことが確認されたとする。
続いて、ζ含有CRISPR-LNPをマウスに投与してから経時的にζの残存量が定量されると、標的臓器である肝臓と次に移行量の多い脾臓において、ζが迅速に排除されることが判明。イオン化脂質の分岐足場構造は搭載薬物の効率的な送達とLNP製剤の安定性の向上に寄与する一方で、立体的な構造の影響で生分解性に乏しいという課題があったという。イオン化脂質は異物であり、高濃度で長時間暴露すると生体に悪影響を与えるリスクが生じる。そのため、生分解性は重要な特性の1つと考えられるとした。ζは分岐位置がエステラーゼの基質となるエステル結合から距離が離れており、エステラーゼによる認識を阻害しなかったために、優れた生分解性が示されたことが推測されるとしている。
最後に、ζ含有CRISPR-LNPを単回投与した後の血液生化学および病理学的検査により毒性が評価された結果、いずれの項目も目立った変化は認められず、ζ含有CRISPR-LNPの優れた安全性が示されたという。
今回構築されたCRISPR-LNPは安全性に優れると共に、肝臓において十分なゲノム編集効率の誘導が可能なことから、同臓器を標的臓器とした代謝性疾患などに対する治療薬としての実用化が期待されるとする。また、今回得られたイオン化脂質の設計指針を基に、より優れた脂質分子の設計や、肝臓外組織や細胞を標的としたCRISPR-LNPの開発にもつながることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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