吉川明日論の半導体放談 第314回 半導体サプライチェーン確保に動くUAEとグローバルファンドリーズ誕生秘話
マイナビニュース / 2024年10月3日 7時15分
私自身、これらのすべてのプロジェクトには現場で関わっていて、その最中には感想を持つ暇などなかったが、今から思うとこれらの大プロジェクトは貴重な経験であったと思う。ヘクターの自伝には当時のCEOとしてのトップレベルの活動が生々しく記されていて、現場にいた私としては「そういうことだったのか…」という感想を持つ場面が多い。
自伝によると、2005年ころ、AMDはCPU技術だけでは多様化する将来のコンピューターニーズには対応しきれないと判断し、グラフィクス技術を企業買収により取り込むことを計画していた。最初のターゲットはNVIDIAであったが、度重なる交渉の中で、Jensen HuangがCEOのポジションを主張したので物別れに終わった。その後、AMDはカナダのATI社との交渉を開始し、2006年に買収が実現した。
買収後、AMDはATI社が持つグラフィクス技術を積極的に取り込み、CPU+GPUのヘテロ構造のAPUが可能となった。この買収なくして現在のAMDは考えられない。ATI社買収の過程で、CEOのヘクターを含むAMDの幹部たちは、ファブレスだったATI社のコストモデルを分析しその優位性を認識した。その結果、AMD自体もファブレス企業に移行することを模索するようになった。自社ファブを構えるAMDは、巨大企業Intelとの熾烈な設備投資競争で常に劣勢に立たされ、優秀なCPUデザインを持っていても生産能力でIntelに打ち負かされてしまうことの繰り返しであった。ATI社のようなファブレス企業に移行すれば、設備投資の重い足枷から解放されると考えたのだ。AMDはすでにドイツのドレスデンに最先端のロジック工場Fab.30を構えていたが、Intelがいずれ微細加工技術とキャパシティの積極的な追加投資でAMDを圧倒することは明らかだった。Intelに対抗する設備投資継続が必要な事態は変わらないが、AMDにはそれを維持する資金力がなかった。
ファウンドリ事業を独立化させるためには何といっても巨額の資金が必要であった。極秘に編成された少人数のチームが投資家の策定に世界中を奔走した。ブラジル、中国、ロシアの巨大投資会社等にもあたった。ヘクターが前職のモトローラ社時代に付き合いのあった東芝にも話を持ちかけたが、結局、交渉は実らなかった。そんな中、俄かに浮上したのがUAEの投資会社Mubadala Investmentだった。
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