青色LED上にペロブスカイトナノ結晶膜を形成した高輝度赤色変換LED、山形大が開発
マイナビニュース / 2024年10月2日 21時6分
手法としては、ホットインジェクション法で合成された赤色発光ペロブスカイト「CsPbI3」ナノ結晶(平均サイズ:11nm)がメタクリレート系ポリマーバインダーに分散・封止され、光学特性評価として、同結晶に青色光を照射し続けて発光強度の時間発展が測定された。その結果、ポリマーバインダーに分散することによって、数百mW/cm2まで励起強度を上げても同結晶の発光強度の劣化を抑制できることが示されたという。これは、ポリマーと配位子が強固に結合することで、配位子離脱による表面欠陥の生成が抑制されたことに起因することが考えられると研究チームでは説明しているほか、時間分解分光と発光量子収率の測定結果から、ポリマーバインダーの分散によって、表面欠陥に起因する非発光再結合が抑制がなされ、発光量子収率が向上することも確かめられたとしている。
また、青色InGaN系LED上にポリマーバインダー分散型CsPbI3ナノ結晶膜をUV硬化樹脂で固定する形で波長変換型赤色LEDを作製。青色LEDのみに1mA(265mA/cm2)の電流を流し、同結晶膜導入の有無による光学特性の変化を評価したところ、青色光は同結晶でほぼ吸収されており、明瞭な赤色発光が観測されたという。点灯直後の発光強度・輝度はそれぞれ3.5mW/cm2、1.9×103cd/m2と従来の同結晶LEDよりも1桁程度高く、103時間と長いデバイス半減寿命が得られたという。加えて、積分球で測定された外部量子効率は最大値26.2%で、最新のCsPbI3ナノ結晶LEDと同程度であり、InGaN系赤色LED(10.5%)よりも高い値が達成されたともしている。
なお、研究チームでは今後、CsPbI3ナノ結晶の劣化特性を詳細に評価することで、そのメカニズムを解明し、産業応用に求められる長寿命化につなげていきたいとしているほか、同結晶はサイズを小さくすることで20倍以上の高輝度化も可能で、次世代のディスプレイ規格「Rec.2020」も達成できるとの見方を示している。また、今回の研究手法を用いると、同様にCsPbBr3ナノ結晶により緑色変換LEDも作製できるともしており、青色LED基板上に緑・赤色ペロブスカイトナノ結晶をインクジェットで塗り分けることで、低コストのマイクロLEDディスプレイへの応用につながることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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