深海熱水噴出孔が発電している可能性、理研などの構造解析にて判明
マイナビニュース / 2024年10月4日 20時36分
理化学研究所(理研)、東京科学大学(科学大)、高知大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)は10月3日、マリアナ海溝北東斜面の水深約5700mに位置する深海熱水噴出孔の構造を詳細に解析した結果、噴出孔中にイオンを選択的に運ぶための小さな通路が存在し、噴出孔が発電している可能性があることを突き止めたと発表した。
同成果は、理研 環境資源科学研究センター 生体機能触媒研究チームの中村 龍平チームリーダー(東京工業大学 国際先駆研究機構(現・科学大 未来社会創成研究院) 地球生命研究所 教授兼任)、イ・ヘウン 基礎科学特別研究員(研究当時)、高知大学 海洋コア国際研究所の奥村知世 准教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
地球の深海の火山活動が活発な場所の近辺には、煙突状の天然構造物である熱水噴出孔がそびえ立っていることがある。そこからは、多彩なミネラルや金属イオンなどを含む熱水が放出されており、それらを利用する独自の生命圏が形成されている。噴出孔は、生命誕生以前の地球にも存在していたとされ、最初の生命が誕生するための「天然の化学合成装置」として、重要な役割を果たしていた可能性があるとも考えられている。
さらに熱水噴出孔は現在、土星の第2衛星エンケラドスに代表される、太陽系の巨大ガス惑星が従える氷衛星にも存在する可能性が示唆されており、そうした地球外の天体にも噴出孔を中心とした生命圏が存在している可能性があるとされる。
そうした中、これまでの黒煙を噴出するブラックスモーカー(BS)型熱水噴出孔に対する研究で、それらが燃料電池のように発電し、その電気により二酸化炭素から有機分子が生成される可能性があることを解明したのが研究チームだという。そこで今回の研究では、別のタイプであるホワイトスモーカー(WS)型熱水噴出孔を詳しく調べることにしたという。
WS型は、水酸化マグネシウムからなり、板状の形状を持つ鉱物「ブルーサイト」を主成分としている。BS型とWS型の違いは、噴出する熱水の温度で、前者が400℃近い高温なのに対し、後者は90℃程度の温和なアルカリ性の熱水を噴出する。そしてWS型は、マグネシウムやシリコンなどの金属水酸化物を主成分として、無数の細孔を持つ多孔質状の構造を作り出すことも特徴であり、この特異な構造と環境が、生命起源に関する重要な手掛かりを提供する可能性があるとされる。
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