1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

深海熱水噴出孔が発電している可能性、理研などの構造解析にて判明

マイナビニュース / 2024年10月4日 20時36分

WS型は、カンラン石と水が反応することでできたアルカリ性の熱水により作り出されているが、今回の研究では、マリアナ海溝の北西側斜面、水深約5700mに位置する「しんかいシープフィールド」から採取されたWS型のサンプルが研究対象とされた。

まず、顕微鏡観察が行われたところ、大きさが100nm程度の小さな板状の結晶が集合することで分厚い膜が形成され、熱水と海水の通り道を作り出していることが判明したほか、同膜には周期的なしま模様が刻まれており、これが何層にも重なることで200~400μmの厚さに成長していることが確認された。

また、放射光X線回折実験にて、同膜の構造が詳しく調べられたところ、試料の全体にわたって、ブルーサイトのナノ結晶が規則正しく配列し、海水と熱水の通り道から放射状に広がっていることが確認されたという。さらに、この配列により、80cmの高さを持つ試料全体に、イオンを運ぶのに適したナノサイズのチャネル(通路)のような構造物が作り出されていることも確かめられたとする。

加えて、海水中に含まれるナトリウムやカリウムなどのイオンの濃度に違いがある環境に試料を浸し、イオン輸送が調べられたところ、ナノサイズのチャネルが持つ表面電荷によって、熱水噴出孔全体が選択的なイオン輸送材料として働き、ナトリウムやカリウム、塩化物、水素などの各種イオンの濃度の違いを電気エネルギーに変換できることが確かめられたという。この結果は、深海熱水噴出孔は海水中の多様なイオンを選択的に運ぶことで、電気エネルギーを生成する天然の「浸透圧発電システム」として機能する可能性があることを意味するという。

なお、研究チームでは、今回の研究によって生命にとって不可欠なイオンを利用したエネルギー変換が、地質学的な過程によって自然に生じることが示されたことから、イオンの濃度差は自然界で広く見られ、生命誕生以前の地球でも同様の現象が起こっていた可能性があるとしている。また、エンケラドスなどの氷衛星では、内部海での熱水活動が示唆されている。将来、そうした天体からのサンプルリターンを実施して詳細な解析を行えれば、今回のサンプルとの類似構造と発電現象が確認される可能性もあるとしているほか、今回の研究成果は、海水と淡水を利用する「浸透圧発電」のための新たな材料合成法としても期待されるとしている。
(波留久泉)



この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください