水星探査機「ベピコロンボ」、3回目の水星スイングバイ時の水星観測の結果を発表
マイナビニュース / 2024年10月7日 14時2分
3回目のスイングバイは1・2回目と似た軌道で、水星の磁気圏を約30分で横断し、最接近時には彗星表面から235kmの地点を通過。その間、みおに搭載されたイオン質量分析器(MSA)、イオン観測器、電子観測器とプラズマ粒子が取得したデータに、数値シミュレーションを組み合わせることで、観測されたプラズマの起源の分析が行われた。
スイングバイの前半で太陽風が自由に流れる領域と磁気圏の間の「ショック境界」の観測結果からは、「低緯度境界層」と呼ばれる、観測が予測されていた構造であることが確認されたが、NASAの水星探査機「メッセンジャー」(2004年打ち上げ、2015年運用終了)による観測から想定されていたより、広範なエネルギーを持つ粒子が観測されたとする。
また、磁気圏に捕捉された高エネルギーのイオンが赤道平面近くおよび低緯度で観測されたともしている。これらは部分的または完全な、磁気圏に捕捉された帯電粒子によって運ばれる電流である「リングカレント」(環電流)ではないかと推測されたとする(地球では、高度数万kmに存在)。水星では磁気圏が惑星のサイズに対して小さいため、粒子がどのようにしてわずか数百km以内に捕捉され続けるのかは未解明のため、ベピコロンボの軌道投入後の2機の観測でより多くの知見がもたらされることが期待されると研究チームでは説明している。
さらに、MSAが特に観測対象とする微小隕石の衝突や太陽風との相互作用などによって水星表面から飛び出した中性粒子がイオン化した惑星起源イオンについての観測も実施されたという。同イオンを観測することは、惑星表面とプラズマ環境の間のつながりを調査することと同義であるため、今回の結果を皮切りに、今後より多くの観測がなされることが期待されると研究チームでは説明している。
なお、ベピコロンボは2024年9月5日実施の4回目の水星スイングバイでも科学観測を実施済み。今後予定されている5回目ならびに6回目(2025年1月9日)のスイングバイでも実施される予定となっている。最終的な周回軌道投入後には2機は個別に観測を行うが、2機が連携した協働観測計画も綿密に検討中だとされているほか、ESAの太陽観測衛星「ソーラー・オービター」やNASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」などとの協働観測も議論中で、広く太陽圏と惑星圏・惑星磁気圏観測をつなぐ太陽圏システム探査の推進が期待されているという。
(波留久泉)
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