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XMASS-I実験全データからはWIMPダークマター存在の有意な証拠は見つからず、XMASSコラボレーション

マイナビニュース / 2024年10月8日 19時40分

画像提供:マイナビニュース

ダークマター探索実験を行うXMASS(エックスマス)コラボレーションは、2013年11月20日から2019年2月1日までの1590日におよぶ長期の観測を行った「XMASS-I(ワン)実験」の全データを用いて、検出器の中心領域だけを用いる有効体積内での原子核散乱信号を探索する解析と、検出器全体を用いて電子散乱信号と原子核散乱信号の季節変動成分を探索する解析を実施した結果、冷たいダークマター候補である「WIMP」の存在に有意な証拠は見つからなかったが、その結果、これまでよりも厳しい散乱断面積の上限値を得ることができたことを発表した。

同成果は、東京大学 宇宙線研究所 附属神岡宇宙素粒子研究施設の安部航助教を論文筆頭著者とする、30名強の研究者が参加した国際共同研究チームのXMASSコラボレーションによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する素粒子物理学や場の理論・重力などを扱う学術誌「Physical Review D」に掲載された。

XMASS-I実験は、世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置「スーパーカミオカンデ」などで知られる、岐阜県飛騨市神岡鉱山内の地下1000mに設置された約1トンの液体キセノンを用いた「XMASS-I検出器」を用いたダークマター検出実験である。

ダークマターは一般的に、通常物質とは重力以外では相互作用しないと説明されるが、極めてまれではあるが、通常物質の原子核と衝突(弾性散乱)することがある。中でもおよそ-100℃まで冷却された液体キセノンは、衝突時の発光量が多く、装置を10トンクラスに大型化しやすいこと、バックグラウンド(ノイズ)のもとであるウランやトリウムなどを極めて少なくできるなどの特徴を有するほか、検出器は800トンの水タンクの中にあり、外部から侵入する放射線が引き起こすノイズ事象の多くは水に吸収されてしまうことから、検出器の中心部(この部分を有効体積という)はノイズの少ない環境となり、中心部で発光した事象のみを選ぶことで高い感度での探索が可能になるとされている。

そして現在、ダークマターの候補は複数あるが、液体キセノンは、そのうちのWINP(Weakly interacting massive particle、ダークマターの候補の1つである仮説上の粒子)の一種である「ニュートラリーノ」(超対称性理論によって予言されている、光子やヒッグス粒子などの超対称パートナー)や、「アクシオン」および「アクシオン類似粒子」(強いCP問題を解決するために考案された仮装粒子とその類似粒子)、「ダークフォトン」(光子の類似粒子)を検出できると考えられている。

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