XMASS-I実験全データからはWIMPダークマター存在の有意な証拠は見つからず、XMASSコラボレーション
マイナビニュース / 2024年10月8日 19時40分
2019年の発表では705.9日分のデータを用いた解析結果が発表されたが、今回は1590.9日分のデータが用いられた。結果として有意な信号は見つからなかったとしたが、それによって散乱断面積の上限値を得ることができ、最も厳しい上限値は前回の1.6倍の60GeV/c2のダークマターに対する1.4×10-44cm2だったとした。
「季節変動解析」はもっと質量の小さいWIMPを探すことを目的としており、ダークマターの信号が季節で変動することを利用し、季節で変動をしないノイズ事象の中に季節変動をする成分があるかどうかを調べることでダークマターの信号探索を行うという内容である。質量が小さいWIMPは散乱時の発光がとても弱く、有効体積内での事象だけを選ぶことがうまくできないというが、ノイズは多くても、ノイズが時間的に安定であれば季節変動するWIMPの信号を探せるので、同解析の方が有利になるという。また、同解析では、有効体積内の解析と同じ原子核散乱による信号の探索だけでなく、発光が弱いキセノン原子の「制動放射」や「ミグダル効果」(原子核反跳において、低確率だが、追加の励起や電離が発生するという効果)が引き起こす信号の探索も行われた。
今回の1.6年分増加した4.4年分のデータを用いた原子核散乱による探索ではダークマターの質量8GeV/c2(前回の1.3倍)に対して2.3×10-42cm2、同様に4.4年分のデータでの電子散乱を用いた探索の制動放射からの信号に対してはダークマターの質量0.5GeV/c2(前回の1.5倍)で1.1×10-33cm2、今回初実施のミグダル効果からの信号では同じ0.5GeV/c2で1.4×10-35cm2という結果が得られ、前回よりも感度が向上した結果が得られたとした。有意な信号は見つからなかったが、上限値が得られたとしている。
XMASS実験は今後、液体キセノンを約5トンに増やし、改良型の光電子倍増管を用いることで感度を向上させる「XMASS-1.5」、最終的には液体キセノンの量を約20トンとすることで、低エネルギー太陽ニュートリノやニュートリノの質量を測定する二重ベータ崩壊の観測も行える「XMASS-II」の実現に向けて計画を進めていくとしている。
(波留久泉)
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