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東大など、第3の磁性体「交替磁性体」のマグノンスペクトルの観測に成功

マイナビニュース / 2024年10月10日 19時10分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、J-PARCセンターの3者は10月9日、近年、第3の磁性体として注目されている「交替磁性体」の「マグノン」のスペクトルの観測に成功したことを発表した。

同成果は、東大 物性研究所のリウ・ゼユアン大学院生、同・益田隆嗣教授(トランススケール量子科学国際連携研究機構 教授/KEK 物質科学研究所 客員教授兼任)、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の伊藤晋一教授らの研究チームによるもの。詳細は、「Physical Review Letters」に掲載された。

これまで磁性体は、強磁性体と反強磁性体の2つに分類されてきたが、最近になって、第3の磁性体として「交替磁性体」が提案された。電子スピン周辺の結晶構造まで含めた対称性により磁性体を分類するという、新しい概念を導入することで現れた磁性体で、回転させることによって重なるような対称性を持つ結晶構造をもち、かつスピンが反平行に配列していることを特徴として分類されている。

交替磁性体では、スピン流を運搬できる準粒子である「キラルマグノン」という物理状態が予想されていた。これまでのキラルマグノンは、強磁性体のものが注目されてきたが、スピントロニクスデバイスとして見ると、低周波数(ギガヘルツ)でしかデバイスが動作しないという課題があったという。また、有限の磁化を持つため、デバイスとしては望ましくない漏れ磁場もあるとする。そして反強磁性体では、高周波数(テラヘルツ)での動作が期待されているものの、マグノンの「キラリティ」が完全に打ち消しあってスピン流を運ばないため、デバイスとして動作させることが困難とされていた。

キラリティは、右手と左手のように、基となる状態とその鏡像が重なり合わない状態のことをいう。物体が回転している場合も、時計回りと反時計回りでは重なり合わないため、特定の方向に回転している状態はキラリティを有する状態となる。マグノンには、スピンが反時計回りに歳差運動するキラリティのものと、時計回りに歳差運動するキラリティのものと2種類がある。

強磁性体と反強磁性体には長所と短所が存在するが、その両者のいいところ取りをしたのが交替磁性体といえる。同磁性体のマグノンは、高周波数で大きくキラル分裂することが理論的に予想されており、超高速スピン流の生成が期待されている。これは反強磁性体のようにスピン配列が反平行となっていて磁化がゼロであり、漏れ磁場の心配がないにも関わらず、磁化が有限の強磁性体のようなキラルマグノンを有している点で新しいというわけである。

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