酸化モリブデン/カーボン系触媒の常温・短時間合成技術を名工大が開発、水質浄化などでの活用に期待
マイナビニュース / 2024年10月17日 6時51分
名古屋工業大学(名工大)は10月15日、酸化モリブデン(α-MoO3)/カーボン系複合粒子の化学構造の高度な制御手法を確立。それを用いて常温・短時間合成プロセスを開発し、同粒子が太陽光のエネルギー領域をほぼ100%カバーできる光吸収性を持つことに加え、光熱変換効果を利用した急速水蒸発、光触媒・酸触媒機能による水質汚染物質分解、および重金属イオンの吸着除去に優れることなど、水質浄化・淡水化用触媒材料に適していることを発見したと発表した。
同成果は、名工大 生命・応用化学類の加藤邦彦特任助教、同・白井孝准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する材料と界面プロセスに関する全般を扱う学術誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載された。
衛生的で安価な飲料水の確保は世界的に喫緊の課題であり、現在、太陽熱界面蒸気生成法による淡水化技術が注目されている。同手法は太陽光を熱に変え(光熱変換効果)、水面付近にエネルギーを閉じ込めることで高い水蒸発効率を達成できる手法で、発生した蒸気を冷却・濃縮することで淡水として回収するというものだが、従来の光熱変換触媒では、光吸収範囲が制限されることがエネルギー変換効率向上の妨げとなっていたという。
α-MoO3は、層間に多様なイオンや分子を出し入れでき、その挿入量に応じて結晶構造が組み替えられることで、可視光域-近赤外光域で優れた光吸収能を発現することから、今回、研究チームでは、水素イオン(H+)に注目し、市販のα-MoO3から準安定相「MoOx」の合成を目指すことにしたという。
既存のMoOx合成技術は、引火性/爆発性ガス(水素)や高濃度酸試薬の使用に伴う追加の安全対策が必要なだけでなく、高度かつ複雑な処理技術や大量生産における制約があるなどのさまざまな課題があるとされる。そうしたこともあり、今回の研究では、新たな合成手法としてメカノケミカルプロセス(MCプロセス)に注目する形で、汎用プラスチックであるポリプロピレン(PP)を市販α-MoO3粉体と共に短時間処理するだけで、MoOx/カーボン複合粒子を常温合成できることが示されたとする。
反応機構が検討された結果、材料間の反応でPPの分解と同時にα-MoO3の還元が促進され、PPは反応過程でカーボンに変換され、複合構造を形成することが示唆されたという。また、開発された複合粒子は紫外線から近赤外線までの幅広い範囲で高い光吸収能を示すことも確認。太陽光のエネルギー分布と比較するとほぼ100%の光領域をカバーできるという。
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