1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

東大生研、マイクロ流体工学の技術を半導体の熱整流技術に応用することに成功

マイナビニュース / 2024年10月18日 16時41分

画像提供:マイナビニュース

東京大学 生産技術研究所(東大生研)は、絶対温度50K(約-223℃)付近において、マイクロ流体工学で広く用いられる「テスラバルブ構造」を用いた「熱整流効果」(熱が一方向に流れやすく、その逆方向へは流れにくいこと)の発現に成功したことを発表した。

同成果は、東大 生産技術研究所のシン・コウ特任助教、同・アヌフリエフ・ロマン特任准教授(現・国際研究員/フランス国立科学研究センター 研究員兼任)、同・ロラン・ジャラベール国際研究員(フランス国立科学研究センター 研究エンジニア兼任)、同・ヤンユ・グオ リサーチフェロー(ハルビン工業大学 教授兼任)、同・ユーシャン・ニー リサーチフェロー(西南交通大学 教授兼任)、同・セバスチャン・ヴォルツ国際研究員(フランス国立科学研究センター 研究ディレクター兼任)、同・野村政宏教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

半導体の高性能化に加え、製品寿命や安全性を確保する上で重要性が増しているのが、効率よく排熱する材料や技術、一方向に熱を伝えやすくする熱整流機能などの熱管理技術だという。軽量かつ安価なグラファイト(黒鉛)材料を熱機能デバイスに応用できるようになれば、機器のより高度な熱管理が可能になり、多種多様な電子機器の高性能化が期待できるとされている。

天才として知られるニコラ・テスラが、マイクロ流体工学分野において開発した可動部なしに流体の流れを操作して整流できる「テスラバルブ」については、電子においても、流体的な性質を利用することで整流機能を実現できることが報告されていたが、固体中の熱整流で実現できるかどうかは不明だったという。

そうした中、研究チームが最近になって、同位体純化グラファイト材料において、結晶中における格子振動の量子(準粒子)であり、非金属固体における熱の主な運び手である「フォノン」の流体的な性質を用いた熱流の形成を観測することに成功したことから、熱整流の実現への期待が高まっていたという。そこで研究チームは今回、同バルブの概念を固体における熱流にまで拡張し、フォノンの流体的な性質を利用して「固体熱整流素子」の実現を試みることにしたという。

グラファイトは炭素で構成される鉱物だが、炭素の安定同位体には中性子が6個の「12C」と、同7個の「13C」があることから、今回の研究では、天然のグラファイト中から13Cを除去し、1.1~0.02%まで低減した「同位体濃縮グラファイト」を作成。それを用いて「フォノンポアズイユ流れ」を形成し、25~60K(約-248~約-213℃)の温度範囲で最大で15%の熱整流効果を観測したという。このポアズイユ流れとは、円形の管を流れる粘性を持った流体の流れ方で、構造中央で最も速く熱が流れ、端では流れにくいことを表すもので、フォノンの流体力学的熱輸送領域でも、同様の現象が見られることから、このように呼ばれているという。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください