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吉川明日論の半導体放談 第316回 前代未聞、x86命令セットで協業するAMDとIntel

マイナビニュース / 2024年10月18日 18時28分

画像提供:マイナビニュース

先日、とある米国の業界ニュースサイトの写真を見て仰天した。AMD/Intel両社のCEO、Lisa SuとPat Gelsingerがにこやかな表情で1つの写真に収まっているのである。

最近のIntelの周りでは買収提案などのニュースが飛び交うので、フェイクニュースか? とも思ったが、調べてみると先ごろシリコンバレーのSan Joseで開催された「2024 OCP( Open Compute Project) Global Summit」にて、AMDとIntelがx86命令セットに関するAdvisory Groupを立ち上げ、x86命令セットの共通化で協業するという発表があったことを知った。仇敵の両社の前代未聞の発表に思わず喝采した。
x86命令セットでAdvisory Groupを立ち上げたAMDとIntel

50年近い歴史を持つx86命令セットの歴史はそのままマイクロプロセッサーの歴史でもある。最初にIntelが定義したx86 ISAはその市場が拡大するにしたがって参入企業が増え、その使用や特許問題をめぐってIntelはAMDを始めとする多くの互換プロセッサーブランドとの間で血みどろの戦いを繰り広げた。その結果、かつては10社近くあったx86プロセッサー製品を提供する企業は現在、IntelとAMD以外に台湾のVIAと中国のHygonのみとなってしまった。

今回の発表で、多くの訴訟問題を含んだ骨肉の戦いを繰り広げた永遠のライバルAMD/Intelが命令セット共通化に向けて協業することとなり、PC/サーバーでの重要顧客であるHPE、Dell、Lenovoといったハードウェア、Microsoft、Oracle、Googleといったソフト/プラットフォームブランドの多くが賛同の表明をしている。Linuxの開発で知られるリーナス・トーバルズ、Unreal Engineの開発などで知られるティム・スウィーニーと言った有名人も賛同を寄せている。業界全体にとっての朗報と受け止めるべきだろう。

これまでのAMDとIntelの関係は熾烈な競争を繰り広げる仇敵以外の何物でもなかった。技術的な競争以外でも、IntelはAMDを相手取って多くの訴訟を仕掛けたが長年の訴訟合戦の結果、両社はx86命令セット/特許を含む知的財産権に関する抗争をすべて取り下げ、双方がクロスライセンスすることに合意した。しかし、共通のx86命令セットに基づく実際のプロセッサー製品では、最新のソフト環境に必要な拡張命令などについてAMDとIntelでは微妙に取り組み方が異なり、一部のソフト開発者にとっては悩みの種となっていたが、この領域で両社が協業しながらx86アーキテクチャーをさらに進化させていくという両社の姿勢は業界全体にとって好ましいと言えるだろう。

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