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宇宙の電子加速に作用する「コーラス放射」人工的に抑圧できる、金沢大が解析に成功

マイナビニュース / 2024年10月21日 15時31分

画像提供:マイナビニュース

金沢大学は10月18日、鳥のさえずりに似た周波数変化を伴う電磁波で、宇宙の電子を放射線になるまで加速させるプラズマ中で発生する波動である「コーラス放射」の発生を、人工的に抑圧する解析に成功したと発表した。

同成果は、金沢大 理工研究域 電子情報通信学系の尾崎光紀 准教授、同・八木谷聡 教授、京都大学 生存圏研究所の大村善治 特任教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国地球物理学連合が刊行する地球科学全般を扱う学術誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。

宇宙は放射線の行き交う場であり、太陽起源のものもあれば、天の川銀河内のいずこから(まだ発生場所は完全に絞り込めていない)、さらには天の川銀河外からもやって来る。それに加え、地球近傍の宇宙でも電子を放射線のレベルにまで加速させるメカニズムが存在することも近年、明らかになりつつある。

こうした宇宙放射線が問題なのは、人工衛星や国際宇宙ステーション(ISS)などに搭載されたコンピュータのメモリに衝突した場合、内容が書き換えられてしまい、エラーが生じる可能性がある点。そのため、電子回路を守るための対策は必須であり、エラーに備えて同じ内容を複数記憶するシステムを搭載して冗長性を持たせたり、放射線から守るための数mmの金属筐体でシールドしたりすることなどが行われている。しかしこれらは、1gでも軽くすることが求められる宇宙機の重量を増やしてしまったり、積載量を圧迫してしまったりするため、新たな放射線対策が求められていた。

近年になって、地球周辺の宇宙空間において、自然電磁波の一種であるコーラス放射による電子加速が、静止軌道程度までの地球周辺の宇宙空間を飛び交う、数百keVから数MeVまでの高エネルギーを有する放射線レベルの電子である「放射線帯電子」を生み出す要因になっているということが解明されつつある。また、併せて電子との相互作用により発生する大振幅であるコーラス放射の発生メカニズムも解明されつつある。コーラス放射の発生メカニズムの研究推進は、宇宙開発において厄介な放射線を生み出す同放射の発生を阻害する物理メカニズムの確立にも重要だという。

電子の運動は電流となるため、コーラス放射は電子の運動によって生じる自然アンテナから放射される電磁波と考えることができるという。コーラス放射は、大きな振幅に成長する前の弱い振幅の電磁波と電子の非線形な共鳴により発生することが、京大の大村特任教授らによって解明されてきており、発生の際、電磁波の周波数を変化させる電流を生み出す非線形な電子の運動によって、大きな振幅を持つ電磁波へ成長することが解き明かされつつある。そこで研究チームは今回、この発生メカニズムを巧みに扱い、人工電波を使うことで、電磁波の周波数を変化させる電流を生み出す非線形な電子の運動を阻害し、コーラス放射の発生を抑圧する人工制御を考案することにしたとする。

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