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ULAの新型ロケット「ヴァルカン」、不屈の飛翔 - ブースターが破損するも打ち上げには成功

マイナビニュース / 2024年10月22日 15時42分

このため、全体の推力方向が非対称になり、機体は一時的に傾いたものの、メイン・エンジンが補正することで持ち直した。その後、予定よりやや遅れつつも、SRBの分離や第1段と第2段の分離などをこなし、ほぼ計画どおりの経路で飛行していった。

セントールV上段も予定より約20秒長く燃焼したのち、離昇から約35分後に、計画どおりの高度約500km、軌道傾斜角約30度の軌道に入った。セントールVが長く燃焼することで、SRBのトラブルによる損失を補ったものとみられる。

その後、セントールVは3回目の燃焼を実施し、地球を回る軌道から脱出し、太陽のまわりを回る軌道に入った。

打ち上げ後、ULAは「打ち上げは成功した」との声明を発表した。また、同社のトリー・ブルーノCEOは、「SRBのひとつに、記録すべき出来事が発生したため、現在調査している。ただ、ロケットの性能についてはおおむね満足しており、正確な軌道投入も果たせた」とコメントし、深刻な問題ではなかったことを強調した。

また、ブルーノ氏はXで、「(重りではなく)ドリーム・チェイサーを搭載していたら成功していなかったのでは?」という問いに対し、「それは違う」と否定したうえで、「ロケットは設計どおり機能し、壊れたSRBの推力低下を補った。推進薬の消費量は基準ラインの予備量内であり、ペイロード質量(筆者注:ドリーム・チェイサーの質量のことと思われる)に基づくマージンも影響を受けなかった」と述べ、仮にドリーム・チェイサーを搭載していたとしても打ち上げは成功していたとの見方を示した。

米国宇宙軍は、「我々は、飛行データの分析を開始しており、ヴァルカンがさまざまな国家安全保障宇宙ミッションの認証要件を満たすことを期待している」との声明を発表し、ULAと同じく、前向きな姿勢を見せている。

打ち上げの安全審査などを担当する米連邦航空局(FAA)も、この飛行に関して調査は行わないと発表している。

ブースターが故障したにもかかわらず、打ち上げが成功したことは、不幸中の幸いだったといえよう。飛び散った破片の大きさや、漏れ出した燃焼ガスの方向や量によっては、ロケット全体を破壊していたかもしれない。

また、おそらくノズル・スロート(首のようにすぼまったところ)までは壊れなかったため、推力や比推力(効率)の低下も比較的小さく、飛行全体に大きな影響を与えずに済んだ可能性もある。

今後、米国宇宙軍が今回の飛行に対し、どのような判断を下し、安全保障ミッションに必要な承認を与えるか、そして今年中に予定されている初の実運用ミッションである「USSF-106」が予定どおり打ち上げられるのかどうかが焦点となる。

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