1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

マイクロ波ロケットの実現に向けたプラズマ観測手法、東北大が提案

マイナビニュース / 2024年10月23日 12時51分

画像提供:マイナビニュース

東北大学は10月22日、空気を燃料とし、地上からのミリ波ビームで推力を得る「マイクロ波ロケット」において、その設計や性能向上に不可欠とされる「ミリ波放電プラズマ」の「電離波面」の進展機構に関して、プラズマを生成する入射ミリ波と、プラズマによって反射されるミリ波の干渉で生じる「定在波」を観測し、その時間変動を分析することで、その進展様式を区別する観測手法を発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科の鈴木颯一郎大学院生、同・高橋聖幸准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する応用物理学に関する全般を扱う学術誌「Journal of Applied Physics」に掲載された。

現在の化学ロケットは、1kgのものを打ち上げるのに数十万~数百万円ものコストがかかるため、宇宙の活用を促進するためにはさらなるコスト削減手法の実現が求められている。この問題を解決するため、東京大学(東大)と量子科学技術研究開発機構が2003年に共同で提案したのが、マイクロ波ロケットと呼ばれる技術だという。同ロケットの内部は空洞で、上端に凹面鏡が備えられており、エンジンも燃料タンクもない簡素な構造が特徴で、その内部に向けて地上から高出力のミリ波ビームを照射して凹面鏡で集光させることで、上方から吸い込んだ空気をプラズマ化(よって1段目ロケットに適している)。生成された「ミリ波放電プラズマ」が空気を急激に加熱することで衝撃波を発生させ、その圧力により推力を得ようという仕組みだという。

燃料などを必要とせず、構造も簡素なことなどから、化学ロケットよりもコストを削減できることが期待されている。ミリ波ビームの発振設備の建設に初期費用がかかるものの、繰り返しの使用で償却できるとされ、化学ロケットの1段目をマイクロ波ロケットに置き換えた場合、約2000回の打ち上げでコストが従来の1/4になると試算されている。

マイクロ波ロケットの設計や性能向上に不可欠なのが、ミリ波放電プラズマがビーム源に向かって波のように進展していく領域である電離波面の進展メカニズムの解明だが、そのためには数値シミュレーションが有効とされるものの、その進展速度やプラズマの構造を正確に予測できる数値モデルが存在しないことが課題だったという。

これまでの東大の実験から、投入エネルギーあたりの推力が最大になる電離波面の進展速度が、機体の長さに依存することが報告されており、その予測こそがマイクロ波ロケットの設計において重要とされている。また、実験時のハイスピードカメラでの観測で、ビームの中心の電離波面の先端部の速度が毎秒1000m、ビームの中心軸から離れた電離波面の辺縁部では粒状プラズマが毎秒400mで連続的に進展する様子が捉えられていた。多数のプラズマの粒の発光の影響で、電離波面の中心部は死角となっていたが、辺縁部との類推から中心部も連続的に進展しているものと予想されたという。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください