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バイプレイヤーの泉 第144回 『室井慎次 生き続ける者』定年後のロールモデルは室井慎次か、柳葉敏郎か

マイナビニュース / 2024年11月14日 6時0分

画像提供:マイナビニュース

コラムニストの小林久乃が、ドラマや映画などで活躍する俳優たちについて考えていく、連載企画『バイプレイヤーの泉』。

第144回は俳優の柳葉敏郎さんについて振り返ってみたい。そう、今、公開中の『室井慎次 敗れざる者』に主演する、あの人。

私はおぼろげな記憶ながら、彼が『一世風靡セピア』というグループで「せいやっ!」と、踊ったり歌ったりしていたのを知っている。改めて年齢を調べてみると、今年で63歳らしい。キャリアが長いと、観る側の年代によっては印象が変わる俳優もいれば、一定のタイプもいる。ちなみに柳葉さんはどうも前者だ。
○昭和生まれは「ギバちゃん」と呼びたい

先日、カフェで20代と思しき女性2人の会話が聞こえてきた。

「この人ってさー、室井?」

室井? って、あの室井よね。柳葉敏郎演じる『踊る大捜査線』(1997年)の室井管理官。頼まれてもいないのに、つい会話に参加する。

「そうそう、室井。映画やってるよね」
「うちのオカン、観に行ってたよ」
「この人さー、コワモテじゃない? 顔、超、怖いもん」

ほほう……。20代から見ると、柳葉は終始しかめっ面をしているイメージなのかもしれない。実際、眉間にシワを寄せる室井ストロングスタイルは、作品内でも定番だった。若い子が見ているドラマを辿っていくと『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系 2008年)で見せた、白髪まじりの黒田修二役も、厳しい上司だった。彼女たちが「コワモテ」と称するのも、当たり前か。

ただ彼女たちの母世代の私からすると、ギバちゃん(この呼び方、伝われ)というのは、とても朗らかで優しくて、熱い印象がある。特に『29歳のクリスマス』(フジテレビ系 1994年)で演じていた、新谷賢役。思うような就職ができなくてコンプレックスがあるけれど、誰に対しても優しい。お会いできたことはないけれど、大きな口でニカッと笑う様はご本人のイメージに近いはず。

彼に対して尊敬の意を覚えるのは、世間の自分に対する印象を変えながらも、30年以上、第一線にいることだ。

たまたま『室井慎次 敗れざる者』の番宣で、最近『踊る大捜査線』のシリーズが大量に放送されていた。今から約30年前の作品だ。まだ役名のない、現在活躍している俳優たちがチラホラと顔を見せていることが、ネットニュースでも話題になった。それも見ていて面白く、懐かしいと思った。

ただ、結局バイプレイヤーのまま、一線には名前が挙がらず、消えていった俳優たちのほうが圧倒的に多い。その人数は枚挙にいとまがない。そんな様子を見ながら、芸能界がいかに難儀な世界であるのかを感じる。柳葉敏郎は荒波を超えて、そこに立っているのだと思うと、その佇まいの歴史に感動する。「果たして自分もそこまで働けるのか」と、室井のごとく、眉をしかめる。
○一瞬で室井にスイッチング

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