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中小企業デットファイナンスの新潮流 第33回 コベナンツ

マイナビニュース / 2024年11月8日 8時0分

画像提供:マイナビニュース

前回は農業融資について解説いたしました。今回はコベナンツについて取り上げます。

新聞・雑誌をはじめとした報道では、コベナンツという言葉に対し財務制限条項が訳語として当てられることが多いです。筆者は「資金供給者側のリスク負担の前提が覆ることを防ぐために、企業行動を一定の範囲内に制限し、かつ、継続的にモニタリングできるようにするための約束事」だと理解しています。コベナンツに関する教科書『財務制限条項の実態・影響・役割―債務契約における会計情報の活用』の冒頭のはしがきでは、「本書で取り扱うものは、財務制限条項と呼ばれる「約束事」である。これは、企業間の債務契約に設定されるもので、簡潔に言えば、資金の貸し手が借り手に対して「してほしいこと」あるいは「してほしくないこと」を表現したものである」と紹介されています。さらに詳しく見ていきましょう。

続けて上記の教科書から引用します。「財務制限条項(financial covenant)とは、債務契約に付される「約束事・誓約」(covenant)のうち、特に借り手企業の財務諸表ないし会計情報に依拠したものを指す。融資機関(債権者)は、貸出債権の安全性を確保すると同時に、借り手企業の財務健全性を客観的に判断・把握することを目的に財務制限条項を活用する」と書かれており、コベナンツという言葉は財務制限条項よりも広い概念であることが理解できます。日本証券業協会が2024年7月に公表した『「社債市場の活性化に向けたインフラ整備に関するワーキング・グループ」報告書』においても、コベナンツは社債の「発行会社に課せられた一定の義務や誓約」だと述べられています。

コベナンツの内容については先述の報告書の中でコンパクトにまとめられており、教科書の内容も加味した上で、3パターンに分類できると考えられます。

【1】借り手企業の特定の行為を制限し、債務履行能力の低下を防ぐことを企図する「インカランスコベナンツ」
【2】社債権者の投資判断に重大な影響を及ぼす事象が生じた場合に、借り手企業に対し債権者へ報告を行う義務を課す「レポーティングコベナンツ」
【3】一定の財務指標の維持を求める「財務維持コベナンツ」

報告書によれば、インカランスコベナンツの代表例は「担保提供制限」「負債の制限」「支払制限」「投資等の制限」「資産の処分に関する制限」「関連当事者との取引に関する制限」「チェンジオブコントロール条項」です。エクイティファイナンスで求められることがある内容も含まれています。レポーティングコベナンツは、「期限の利益の喪失事由」「経営・業況の重大な変化」「財産・資産の変化」等の特定の事象が発生した場合の迅速な報告、コベナンツの対象となる財務指標の定期的な報告(有価証券報告書等による開示)を義務付けます。

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