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中小企業デットファイナンスの新潮流 第34回 シンジケートローン

マイナビニュース / 2024年11月15日 8時0分

【2】参加金融機関(投資家)のメリット
地域金融機関においては、地方経済の低迷により地元企業への貸出機会が減少した時期に、シンジケートローンへの参加が新たな貸出機会として注目された。新規貸出先の発掘以外にも、リレーションシップの構築・維持にかかるコストを抑えた貸金運営、融資ポートフォリオの調整やリスクの分散、コベナンツを利用した信用リスク管理もシンジケートローンの効用として挙げられる。

【3】アレンジャーのメリット
アレンジャー業務に参入する理由として、顧客企業へのソリューション提供力の強化とその結果としての手数料収入獲得、戦略的なポートフォリオ・マネジメントなどが挙げられる。

一方で、シンジケートローンのデメリットについて指摘している書籍が『ファイナンス業務エッセンシャルズ』です。「アレンジャー兼エージェントに支払うアレンジメント・フィー及びエージェント・フィーなどを踏まえたオールインコストで見た場合、相対借入よりコスト高になるケースもある」「シンジケート・ローン契約特有のコベナンツの内容次第では、経営の意思決定に一定の制限が課せられるなど、企業にとってはメリットの多い取引にならないケースも散見される」「本来シンジケート・ローンには馴染まない中小企業にまでその裾野が広がってきたことにより、コベナンツへの抵触が多発するなど問題も多い」と述べています。

借入企業の視点で概ねコストが下がるという立場の『デットIR入門』と、コストが上がるという立場の『ファイナンス業務エッセンシャルズ』との間に、意見の差異が生じています。原因を読み解く鍵はシンジケートローンの金額にあると考えられます。前者を執筆した研究会のメンバーは大企業出身で、後者の著者は中堅企業向けの財務コンサルティングに携わっていました。シンジケートローンを組成するとき、規模に関係なく必要となる一種の固定費用があり、シンジケートローンの金額が小さいときに割高感が出ると推察します。

2024年10月31日に発表された全国銀行協会の統計「貸出債権市場取引動向」によると、2024年第三四半期(7月-9月)に組成されたシンジケートローンの件数と合計金額は、タームローンが465件・5兆3,581億円(平均115.2億円)、コミットメントラインが301件・3兆8,740億円(平均128.7億円)という規模感です。取引金額の観点でシンジケートローンは大企業向けの資金調達手段だと一般的に解されます。

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