電力クライシスに備えよ! 世界の潮流から読み解くデータセンターの今 第5回 日本のデータセンターでもSDGsを重視した取り組みを
マイナビニュース / 2024年11月21日 7時0分
DCIMによる分析とモニタリングは、緊急時の最適化やバックアップに瞬時に対応できるだけではなく、さまざまなシミュレーション機能も提供している。例えば、PDUで個々の電源コンセントの電力消費を計測すれば、どの区画が必要以上に電力を消費しているかが把握できる。その情報をもとにシミュレーションすれば、電力消費の分散などさまざまな最適化が図れる。
データセンターのような大規模施設になると、一旦構成を変更して効果が見られなかったからといって、簡単に元の構成に戻すことはできない。そのため、部分最適ではなく全体最適を実現するには全てのデータをリアルタイムに把握することが重要であり、事前にフロア全体のシミュレーションがいつでも可能になることが重要なポイントになる。
このように、インフラ全体の温度管理や電力消費の状況を見える化し、シミュレーションを適宜可能にするソリューションの活用は、エフコムでは会津若松のデータセンターでは2.6だったPUE(電力使用効率)の値を、福島のデータセンターでは1.24以下に下げることができたという大きな成果を生んでいる。
エフコムは、こうした取り組みによる実績を評価され、シュナイダーが持続可能性に取り組むリーディングカンパニーと賞すべきパートナー、エンドユーザー企業を表彰する「サステナビリティインパクトアワード」において、「Impact to My Enterprise部門」の2023年度のGlobal Winnerに選出された。
現在、生成AIの台頭によって、大きくデータセンターの在り方が変わろうとしている。コンピューティングの高密度化による電力消費の増加を抑えるため、冷却をはじめとする様々な技術が進化しているが、消費電力の増加とそれに伴う環境負荷をいかに下げるかという課題から、世界のデータセンターは逃れられない。
この連載の第2回で紹介したスウェーデンのEcoDataCenterのように、海外ではその土地の自然環境を上手く活用して、高い電力効率を実現するデータセンターが増えており、日本においても、今回紹介したエフコムのように、持続可能性を戦略の軸に置いたデータセンターが主流となっていくのは疑いようがない。しかし、データセンターは立地や運用条件によって取るべき対策が千差万別であり、その環境に合わせたソリューションが必要となる。その際には、寒冷な気候を生かしたフリークーリングシステムや、地域の再生可能エネルギー活用など、環境負荷を低減するための様々な選択肢を柔軟に取り入れられること、そして実運用の際のシミュレーションが適切に行えることが、これからのデータセンターにとっての大きな利点となる。
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