JAXA、XRISMのX線観測によりエキゾチックな連星系の詳細な動きを確認
マイナビニュース / 2024年12月2日 17時8分
両星は非常に近接してお互いの共通重心を回っており、公転周期はわずか4.8時間ほどしかない。つまり、ウォルフ・ライエ星から放出される大量のガスの中を、ブラックホール候補天体が激しく飛び回っているような状況で、当然ながらガスの一部はブラックホール候補天体の強い重力に吸い寄せられて降着円盤を形成する。そして、降着円盤を構成する塵やガスなどは光速に近いようなとてつもない速度で回っているとされ、その結果激しく摩擦し合って高温になり、それが強烈なX線源となる。1秒あたりに放射されるX線のエネルギーは、太陽が放射するエネルギーの数日から10日分にも相当するといい、またこの強烈なX線に激しく照らされることで、周囲のガスは電離している状態だ(これを「光電離プラズマ」と呼ぶ)。
XRISMは初期性能検証期の2024年3月下旬に、普段よりもX線で増光していたはくちょう座X-3を観測し、光電離プラズマの詳細なスペクトルデータの取得に成功。軟X線分光装置「Resolve」(リゾルブ)の圧倒的な分光性能によって、さまざまなイオンによる輝線や吸収線が分離されたとした。
そして今回そのスペクトルが詳細に分析され、ウォルフ・ライエ星から吹き出すガス(恒星風)や、ブラックホール候補天体に落ち込むガスの、詳細な動きを捉えることに成功したという。たとえば、7keV付近に検出された鉄イオン(Fe25+)の輝線がトレースする最も電離が進んだプラズマは、秒速数百kmという猛烈な速度で、公転運動するブラックホール候補天体に引きずられるように動いていることが突き止められた。X線源であるブラックホール候補天体の最近傍で、特に激しい光電離が起こっている様子も確認できたとする。
はくちょう座X-3は、やがてウォルフ・ライエ星側も超新星爆発を経てブラックホールとなり、最終的には重力波源として知られるブラックホール同士の連星になることが予想されている。研究チームは今後、XRISMのデータをより詳しく調べることで、このエキゾチックな連星が、どのような過程で形成され、今後どのような進化を辿るのかが解明されることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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