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輸送と実験の“二刀流”!? 攻めた設計の新型補給機「HTV-X」を見た

マイナビニュース / 2024年12月30日 17時0分

前述のように、HTV-Xはサービスモジュールと与圧モジュールの2モジュール構成。サービスモジュールに、衛星のバス機能を全て集約した。HTV-XをISSへの宅配便とすると、サービスモジュールをトラック本体、与圧モジュールを荷台部分と考えると分かりやすい。将来的には、サービスモジュールを単独で使うようなことも可能だという。

従来のHTVは、“缶ビール”とも言われた円筒形の外観が特徴的だったが、HTV-Xのサービスモジュールは、八角柱の構造を採用している。これにより、スラスタや太陽電池パドルなどの機器を搭載しやすくなった。

ちなみに、サービスモジュールは外側の八角柱と内部を貫く円筒(セントラルシリンダ)の2重構造になっており、打ち上げ時の荷重を効率的に支えることができる。セントラルシリンダの内径は、宇宙飛行士が中を通れるサイズに設計。現時点で具体的な計画があるわけではないものの、将来の発展性を持たせている。

従来のHTVは、大推力を発生するメインエンジン(500N)×4基を最後尾に配置して、軌道制御に利用。機体全体の周囲にRCSスラスタ(120N)×28基を配置して、姿勢制御を行っていた。日本にとって、ISSへの補給船は初めて開発するものだったため、このあたりは非常に教科書通り、スタンダードに作られた印象だ。

一方、HTVでの運用経験を得て、新たに考えられたHTV-Xは、より攻めた設計となった印象を受ける。前述のように、HTV-Xではメインエンジンを廃止。サービスモジュール下部に集約したRCSスラスタ(120N)×24基だけで、軌道制御と姿勢制御の両方を担う。なお、この推進系の部分については、HTVと同じくIHIエアロスペースが担当した。

HTV-XのRCSスラスタは、6基ずつを4面に配置。従来のメインエンジンのように、機軸方向を向いたスラスタはないのだが、下方を向いた各面のスラスタを同時に噴射することで、前方への推力を発生させることができる。スラスタが斜めを向いているため、推進剤は少し無駄に消費するが、能力的には問題ないとのこと。

しかしその一方で、メリットは大きい。従来のHTVでは、推進系の配管を機体の前方から後方まで取り付ける必要があり、それは種子島宇宙センターに各モジュールが搬入されたあとの結合時に行っていた。HTVの6号機では、この工程で不具合が発生し、組み立て後に再分解したことがあったが、そういった問題も起こりにくい。

また宇宙船の"頭脳"となる計算機は、従来は「航法誘導制御」「データ処理」「システム管理」で別々になっていたが、HTV-Xでは機能を「フライトコンピュータ」(FC)に統合した。このフライトコンピュータは同じものを3台搭載し、3台による多数決処理を実施。2フェールセーフの要求を満たす冗長構成にもなっている。

なお、今回公開した初号機用のサービスモジュールは鎌倉製作所での試験を完了し、次は射場へ輸送する段階。2号機と3号機については、製造・試験を実施中だという。初号機用の与圧モジュールはすでに、2022年8月に種子島宇宙センターへの輸送が完了しており、いよいよ、種子島でHTV-Xが完成した姿を現すことになる。

大塚実 この著者の記事一覧はこちら
(大塚実)



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