より多くの人にAIを学んでもらいAIの活用が進むよう尽力 - 日本ディープラーニング協会 松尾理事長
マイナビニュース / 2025年1月7日 11時15分
2025年の年頭にあたり、日本ディープラーニング協会 理事長 松尾豊氏は年頭所感として、以下を発表した。
2025年 年頭所感
皆様、あけましておめでとうございます。
昨年は、生成AIの技術進展と社会的な対応が進んだ年でした。OpenAIからは2月に動画生成の「Sora」が発表され、大きな話題になりました。また、9月には「o1」、12月には「o3」というモデルがリリースされ、推論の能力が大幅に向上しました。推論に用いる計算量が多いほど、より難しい問題が解けるという「推論のスケール則」も知られるようになりました。米Google社や米Anthropic社からも、性能の高い生成AIのサービスが次々とリリースされるなど、2023年に引き続き、技術の急速な進展を目の当たりにする一年となりました。
また、社会での活用も進み、技術の認識も広がりました。「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という言葉が一般的になり、多くの企業で導入が進みました。また、年の後半には、「AIエージェント」という言葉も徐々にメジャーになってきました。AIエージェントは単なる言葉の入出力だけでなく、さまざまなツール・APIを操作するような技術であり、今後はさまざまなタスクをこなせるという方向性への進化がより明確になってきました。
物理世界におけるAI技術も進展しました。ロボット基盤モデルの研究開発が進み、「RT-X」などのトランスフォーマーベースの大規模なモデルが現実的な精度を発揮するようになってきました。10月には、米Physical Intelligence社が「π0」という汎用の基盤モデルをリリースし、大きな評判になりました。特に、乾燥機から洗濯物を取り出すシーンなどは、今後のロボットにおける活用の波を予感させるものでした。
昨年のAIを象徴する最も大きな出来事のひとつは、ノーベル賞において、AIに関係する受賞が相次いだことでしょう。まず、ノーベル物理学賞は、ディープラーニングの生みの親であるジェフリー・ヒントン氏が受賞しました。AIの昨今の驚異的な進展の基礎となったディープラーニング、すなわち「深い」ニューラルネットワークの技術を築いたヒントン氏の業績からすると、今回の受賞は当然とも言えます。連想記憶のモデルである「ホップフィールド・ニューラルネットワーク」を提案したジョン・ホップフィールド氏も共同受賞しました。日本人としては、ニューラルネットワークの主要な概念の発見に大きく貢献した甘利俊一氏も共同受賞に加えて欲しかったと感じました。
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