1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

DX時代におけるサプライチェーンリスクとマネジメントのあり方は? 第1回 顕在化するサプライチェーンのリスクと対策の実態

マイナビニュース / 2025年1月14日 13時0分

車両にして約4万4000台、海外生産用部品で約2万3000台分の影響があり、生産台数を減らしたことによる損失額は約280億円に上ったと試算される。広島にはマツダに部品を納入するサプライヤーが多数集積しており、サプライチェーンのエコシステムが災害の直撃を受けたことになる。さらに、2011年にタイで発生した事例では、大洪水でハードディスクドライブの生産水準が大幅に落ち込み、PCやサーバなどの生産も大打撃を受けることになった。

サプライチェーンの阻害要因は水害に限らない。2022年の夏に猛暑に襲われた中国南西部では、熱波による影響が出た事例もある。四川省は電力の大半を水力発電に依存しているため、干ばつの影響で発電量が足りずに多くの工場が電力供給を受けられなくなり、当局が全ての工場に6日間の操業停止を命じる事態となった。

四川省には多くの重要企業が集まっており、半導体関連のテキサス・インスツルメンツやインテルなどが製造拠点を有している。世界最大の受託製造企業フォックスコンも工場を構える。また、四川省はソーラーパネルの一大製造拠点でもあり、リチウムの主要供給地でもある。工場の操業停止によって、エレクトロニクス業界や自動車業界のほか、肥料・化学業界などのサプライチェーンも大きな影響を受けた。
契機となった東日本大震災

サプライチェーンは「複雑性」と「波及性」という特徴を持っている。サプライチェーンは実に多くのステークホルダーが関係し、それぞれがつながり合い、広がりを見せる。その構造は非常に複雑であり、全容の詳細な把握は難しい。また、ステークホルダー同士がつながり合っているということは、リスクが顕在化するとその影響がサプライチェーンの中で連鎖的に波及していくということであり、ときとして想定していなかったような深刻な被害が発生してしまう。

小さな町工場からの一つの部品の出荷が止まることで、世界的なメーカーの販売活動がストップしてしまうことも大いにありうる。「ある場所で蝶が羽ばたくと地球の反対側で竜巻が起こる」というたとえとして、初期条件のわずかな違いが結果に大きな差を生み出すことを「バタフライ・エフェクト」と呼ぶが、サプライチェーンは全容の把握が難しい以上、予期せぬ結果が連鎖的につながっていくことは避けられない。

それが露呈した特徴的な出来事が、2011年3月に発生した東日本大震災である。被災後、各社はサプライチェーンへの影響の調査をすぐに開始したが、構造が複雑にからみあう中で、どこに問題があり、どのような影響があるのかを即座に確認するのは至難の業だった。特に、一次サプライヤー(仕入れ先)からは比較的すぐに情報が得られたものの、二次・三次サプライヤーより先となると把握に時間がかかり、ある大手自動車完成車メーカーでは状況確認だけで2週間を費やしたという報告がある。
現在のサプライチェーンの問題点

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください