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DX時代におけるサプライチェーンリスクとマネジメントのあり方は? 第3回 サプライチェーン・リスクマネジメントのあるべき姿

マイナビニュース / 2025年1月28日 13時0分

例えば、トヨタ自動車は東日本大震災で大きなダメージを受けた経験を踏まえ、サプライチェーンデータベースの「RESCUEシステム」を構築し、機密性の高い情報も含めて広く自社のサプライチェーンのデータを集約している。

これがあることで、インシデントが発生した際にすぐに影響範囲を割り出せ、復旧支援や代替調達などの対策に即座にとりかかれる。自動車業界のいわゆる「系列」の構造や、トヨタ自動車がサプライヤーに効かせられる強いグリップがあってこその事例とも言えるが、サプライヤー側の負担を軽減する仕組みにすることで、他業界でも模倣が可能だと思われる。
モニタリングの重要性

同様に、リスク事象の発生をリアルタイムで覚知するためのモニタリング体制の構築も重要である。具体的には、自然災害や地政学リスクなど、自社がさらされているさまざまなリスクを把握した上でモニタリング手段を整えておくことになる。例えば大雨であれば、気象庁が「キキクル」というサイトを運営しており、土砂災害・浸水害・洪水災害の3つについてリスクの高まりを把握できる。

下図は、モニタリングを適切に行っていないA社と、適切に行っているB社の対応の違いを比較したものだ。B社のように、リスク事象が発生したらすぐに覚知でき、かつ自社のサプライチェーンの情報が整理・可視化されていれば、迅速に自社への影響評価を行って初期対応が取れる。迅速な復旧は顧客からの信頼を勝ち取ることにもつながる。

一方で、A社の場合はまず覚知することに時間がかかってしまい、報道や取引先からの連絡で初めて知ることとなり、対応が後手に回る。結果として、代替策を実行したり、または納入遅延や復旧までの計画を顧客に連絡したりすることに遅れが生じ、競合からも後れを取ることにつながってしまう。

サプライチェーンの未来像

最後に、今後どのようなサプライチェーンを実現していくべきかを紹介したい。現在われわれが持つサプライチェーンは、硬直的な構造を持っている。効率とスピードを追求するためにリーンな(無駄のない)サプライチェーンを追求してきたからだ。

しかし、無駄のない構造というものは変化に弱い。かといって変化を受容するための余白を多くしたのでは、コスト競争力を上げることはできない。これに対する一つの解が、「リーンでありつつも、状況に適応して変化していくことができるサプライチェーン」というコンセプトである。

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