光度の周期変動型クェーサーは2つの超大質量ブラックホール合体の証拠か
マイナビニュース / 2025年1月20日 20時38分
そして明るくなるフェーズの到来が予想されたことから、さらなる周期性の検証のため、2023年10月から2024年4月に光赤外線天文学大学間連携(OISTER)への観測依頼が出された。OISTERによる可視・近赤外線での観測では、2つのMITSuMEに加え、埼玉大学の55cm反射望遠鏡「SaCRA(サクラ)」に取り付けられた3波長同時偏光撮像装置「MuSaSHI(ムサシ)」が用いられ、その観測の結果、正弦波モデルの予想通り増光に転じていたという。
さらに、上記のアーカイブデータも併せて周期の測定が行われた結果、約1900日周期(静止系で約700日)であることが突き止められた。なお、遠方の天体ほど宇宙膨張により地球から遠ざかっており、観測された光は赤方偏移の値が大きくなる。赤方偏移の値が大きいと、光の波長は引き延ばされるため、地球よりも時間の経過速度が遅くなる。なお静止系とは、その影響を取り除いた値のことだ。
続いて、2つのバイナリー大質量ブラックホール(BSBH)による仮説が検証された。BSBH系では、降着円盤を伴うSMBHの速度が周期的に変化することがわかっている。さらに、それらのSMBHが光の速度に近い相対論的速度で運動していると、観測される光も相対論的効果を受け、観測者に近づくと明るく、遠ざかると暗くなる。この物理過程は「相対論的ドップラーブースト」(相対論的DB)と呼ばれる。周期運動と相対論的な効果が組み合わさることで、結果として明るさも周期的に変化すると考えられている。
相対論的DBでは、異なる波長間の光度変動幅比と天体のスペクトルの勾配比との間に比例関係がある。そこで、観測された振幅比とスペクトルの勾配比が調べられたところ、データ点と相対論的DBによる理論予想が概ね一致したとする。このことから研究チームは、今回のクェーサーの周期光度変動はBSBHの相対論的DBによって引き起こされた可能性があるとしたうえで、ELIRGは銀河同士の合体を経験していると考えられるため、この周期光度変動はSMBH同士の合体の現場を、測光観測という形で捉えた可能性もあるとしている。
なお実際には、周期光度変動クェーサーは追観測において、周期性が崩れることも多くあるという。また今回の周期光度変動は、ランダムな変動パターンの中で偶然に発生した可能性も除外し切れていないとする。そのため研究チームは今後も観測を継続し、結論を出す予定としている。
(波留久泉)
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
原始銀河は球状星団の先祖? - アルマ望遠鏡とJWSTが134億光年彼方に新発見
マイナビニュース / 2025年1月15日 17時45分
-
すばる望遠鏡の新たな超広視野多天体分光器「PFS」が遂に2月から本格稼働へ
マイナビニュース / 2025年1月14日 18時50分
-
2400天体、新装置で同時観測 米ハワイ島のすばる望遠鏡
共同通信 / 2025年1月10日 19時34分
-
国立天文台など、超新星が30年前から質量放出を活発化させていたと確認
マイナビニュース / 2025年1月10日 15時51分
-
天文学、宇宙物理学においてスーパーコンピューターはどのように貢献してきたか?
sorae.jp / 2025年1月6日 11時4分
ランキング
-
1東京都の新アプリ、マイナカード本人認証で7000円分ポイント付与 報道
ASCII.jp / 2025年1月20日 14時30分
-
2ワールドプレゼントのポイントからAmazonギフトカードやdポイントなどへのポイント交換サービスを終了
ポイ探ニュース / 2025年1月20日 11時51分
-
3「じっと見て、やっと理解した……」現役美大生の“ある投稿”にダマされる人続出 驚異的な表現に「なんだこの立体感」と騒然
ねとらぼ / 2025年1月20日 9時0分
-
4セゾンカード、不正懸念の顧客に「ご利用内容確認のお願い」動画送信へ
ITmedia NEWS / 2025年1月17日 16時56分
-
5「またモスが狂ってる」 モスバーガーの作る“卒業アルバム”に困惑 公式の暴挙に「笑いすぎてお腹痛い」
ねとらぼ / 2025年1月20日 12時44分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください