超大質量ブラックホールM87*の降着円盤は一部が逆回転している可能性が判明
マイナビニュース / 2025年1月23日 16時14分
イベント・ホライズン・テレスコープ・コラボレーション・ジャパン(EHT-Japan)、東北大学、八戸工業高等専門学校(八戸高専)、新潟大学(新大)、国立天文台の5者は1月22日、2017年と2018年の観測結果の比較から史上初のブラックホールシャドウの撮影が行われたM87銀河の中心に位置する超大質量ブラックホール(SMBH)、通称「M87*(スター)」について、1年の間に事象の地平面スケールで起こった現象を解析できるようにするため、新たに約12万枚もの理論シミュレーション画像を追加し、観測結果と照らし合わせた結果、M87*の自転軸が地球とは反対方向を向いていることを再確認したと共同で発表した。
またリングの最も明るい場所の変化には、SMBH周囲の降着円盤におけるガスの乱流が重要な役割を果たしていることが示されたことも併せて発表された。
同成果は、論文筆頭著者の米・マサチューセッツ工科大学 ハイステック天文台の秋山和則研究員(国立天文台 水沢VLBI観測所 研究支援員兼任、米・ハーバード大学 ブラックホール・イニシアチブ所属)のほか、日本からも東北大 学際科学フロンティア研究所の當真賢二教授、八戸高専 総合科学教育科の中村雅徳准教授、新大大学院 自然科学研究科・創生学部の小山翔子助教らが参加する、総勢270名近い研究者から組織される国際共同研究チームEHTコラボレーションによるもの。詳細は、欧州の天文学と天体物理学に関する全般を扱う学術誌「Astronomy and Astrophysics」に掲載された。
史上初のブラックホールシャドウの画像が公開されたのは2019年4月のことで、すでに約6年が経過している。撮影されたM87*は、地球から約5500万光年の距離にある、数千個の銀河が集まったおとめ座銀河団の中心に位置する巨大楕円銀河M87のSMBHだ。M87*は、太陽質量の約65億倍というこれまでに観測されている中では宇宙トップクラスのSMBHである。SMBHとは“スーパーマッシブ・ブラックホール”の略だが、このクラスになると、“ハイパーマッシブ・ブラックホール”(HMBH:極大質量ブラックホール)という名称が必要となりうるほどの極めて巨大な質量を有する。
今回の撮影は、アルマ望遠鏡を中心に世界の複数の電波望遠鏡が力を合わせて構成した、地球規模の仮想的な電波望遠鏡のEHTによって達成された。EHTは複数の電波望遠鏡が連携する超長基線電波干渉法(VLBI)という手法を用いたもので、人間でいえば約300万というとてつもない視力を有する。観測自体は2017年とその1年後の2018年に行われ、これまでにも1年間の変化などの研究成果が発表されてきた。
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