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eスポーツは「孤立化する高齢者」を救うのか?

マイナビニュース / 2025年1月28日 13時14分

一方、本音では「eスポーツに興味がない」という高齢者も多いはず。ただ、eスポーツのポテンシャルの高さは、そういった「eスポーツにネガティブな高齢者」も巻き込めるところにあります。

キーワードは「若者」です。

上田氏は「高齢者にとって、高校生(若者)と関わる時間は貴重である」と話します。

また、eスポーツ系のイベント実施後、参加した高齢者たちにアンケートを取ると「若い人たちと触れ合えて楽しかった」の回答が多いそうです。

eスポーツの強みは「eスポーツ」「(eスポーツ好きの)若者」の2軸を媒介として、高齢者を社会参加させられることにあります。

囲碁将棋の弱体化――。若者の人気はeスポーツ

「高齢者」と「若者」の世代間交流にeスポーツが注目されてきた背景には、囲碁と将棋の参加人口の減少も影響しているでしょう。

日本生産性本部「レジャー白書2024」によると、囲碁の参加人口は近年ピークの2009年から8割減、将棋の参加人口は2009年から6割減となっています。

レジャーの多様化により、日本の伝統的なボードゲームが、世代間交流のツールとして、機能しなくなったといえます。

上田氏は「eスポーツは、囲碁や将棋よりも多世代交流に向いている」と発言されています。

若者が「高齢者が慣れ親しんだ娯楽」を遊ばなくなったことで、今までの世代間交流を維持するためには、高齢者が「若者がいま楽しんでいる娯楽」に歩み寄らなければならなくなったともいえます。
高齢者はどこでeスポーツをやるのか――。「年齢」で3つに分類される

では高齢者は「いつ?」「どこ?」でeスポーツをやるべきなのでしょうか。

日本アクティビティ協会 理事長の川崎陽一氏が提唱する「健康ゲーム」という概念は、「高齢者が日中に公共の場でeスポーツをプレイする」ということです。

さらに川崎氏は高齢者にeスポーツをプレイさせるには「3層に分けた実施場所」が必要だと話します。

・65歳の高齢者「健常層」はイベント会場(民間企業との連動)
・75歳の高齢者「予防層」は自治体
・85歳の高齢者「介護層」は介護施設

それぞれにカスタマイズされた環境が必要とのことです。

また川崎氏によると、高等学校のeスポーツ部が3年間で18倍(514校)に増えており「高校生が高齢者にeスポーツを教える」という交流の場も増えてきているそう。上田氏が話す「高齢者と若者の交流の場」が増えているといえます。

eスポーツが「高齢者」に活躍の“場”を与え――。高齢者が「eスポーツ」に活躍の“場”を与える

ちなみに「具体的にどのeスポーツをやればいいのか?」問題ですが、上田氏と川崎氏ともに「高齢者支援という点では『太鼓の達人』が最も適している」と話をしました。

昨今、日本のeスポーツシーンは『Valorant』と『ストリートファイター』が人気ですが、「世代間交流」という観点では「操作が簡単」「暴力的でない」といった要素から、ほかのeスポーツに軍配が上がります。

eスポーツによる世代間交流は、必ずしも「高齢者の社会参加」を促すだけではなく、eスポーツ市場の拡大という点でも良い効果をもたらします。

現状のeスポーツの楽しみ方である「大会」「観戦」「推し活」に加えて、「高齢者の社会参加」という切り口が加わると、より多種多様なeスポーツに焦点が当たることでしょう。
(小川翔太)



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